同じ業界でも、ポジショニングの取り方次第で業績は変わる

 以下の図は、合繊メーカー大手5社のうち、東レ、帝人、ユニチカの2012年度のセグメント別業績を抜粋したものです。

 3社の業績には差がありますが、なかでも繊維事業に注目してみましょう(各社のセグメントは、内容が同一条件になっているわけではありません)。

 東レの繊維事業は、売上6322億円で営業利益432億円。

 帝人は繊維製品・流通と高機能繊維、複合材料を合わせても売上3484億円で営業利益は0円。

 ユニチカは677億円でマイナス4億円です。

 ユニチカも帝人も繊維の名門企業ですが、今となっては、東レと大きな差がついてしまいました。

 東レは、会社全体の営業利益の半分以上を繊維で稼いでいるのです。

 この3社の違いは、各社の繊維業界の見方(将来性のあるなしなど)と、その業界での戦略の選択(ポジショニングのとり方等)に大きな差があったことがうかがえます。

 業界の好不況で各社の業績が同じように上下するかというとそうではなく、戦略の差によって大きな差がついたということです。

 たとえば、東レの場合は、日本だけで見れば繊維産業は、たしかに構造不況業種かもしれません。

 しかし、高機能繊維市場や広く新興国市場に目を向けて見れば、まだまだ伸びていく産業であり、伸びていく業界だと考えたわけです。

 これは他業界(造船重機、電機、自動車産業)を見ても、まったく同じことが言えます。