笑いに変えて、場を制す

2)パーソナルな距離をつくる

 進次郎氏はまた、初対面に近い人との距離感をぐっと縮めるスキルに長けています。
 例えば、地方で演説の際、一番前にいる方を引合いにだし、「先程から団扇で私をあおいで下さっている方、有難うございます。お気持ちだけは十分に届いております」と笑いを取る。これによって、言われた本人は勿論嬉しいでしょうし、周りで聞いている人も親しみを感じないわけはありません。
 また、このパーソナルな距離感を作るために実践しているのは、名前を必ず呼ぶという事です。記者たちから話しかけられると、「○○さんのその質問ですが」と名前を必ずつけて答える。これによって、批判的なことを書いてやろうだとか、言葉で追い詰めてやろうといった記者たちの意欲も消え失せます。誰しも、個人として相手に認知されると、悪いことはできないものです。

3)笑いに変えて、場を制す

 また、進次郎氏は切返しの上手さでも際立っています。

 安全保障委員会の冒頭で指名される時、間違えて父親の「小泉純一郎君」と呼ばれたことに対して、「早速、緊張を解いて頂き、有難うございます」と切り返し会場の笑いをさらいました。
 間違えた相手の気恥ずかしさを、こういうウィットでフォローする。それによって、場の雰囲気を和らげるだけでなく、間違えた本人の気まずさをも打ち消すことができます。

 また、注目され何度もメディアで放映された、事業仕分けでの蓮舫氏との対決。
そこでも、進次郎氏の切返しは傑出していました。

 蓮舫氏の嫌味に対して、「私はいまの答弁を聞いて、蓮舫さんがなぜ人気があるのか分かりませんね」と反論。一見、相手への批判のように受け取れるものの、実は「人気がある」という事実を認めて、それを伝えている。結果、相手に伝えたいネガティブな感情は、ポジティブな面で消されるのです。

 これによって、相手を嫌な気分にさせず、また、聴衆の皆にも苦い雰囲気を味わわせることなく、十分に言葉のやり取りを楽しんでもらうことができるのです。