西條剛央(さいじょう・たけお) 早稲田大学大学院(MBA)客員准教授(専門は心理学と哲学)。1974年、宮城県仙台市生まれ。SNSと構造構成主義という独自に体系化した理論を活用し、日本最大級の支援組織「ふんばろう東日本支援プロジェクト」を立ち上げ、10万人規模のボランティアが自律的に参加できる仕組みをつくる。同組織では、物資を3000ヵ所以上の避難所や仮設住宅へ届ける「物資支援プロジェクト」、個人避難宅を中心に2万5000世帯以上に家電を支援する「家電プロジェクト」など、合計50以上の多岐にわたる支援を展開した。 その結果、日本最大の総合支援組織に発展し、3300億円以上の寄付金を集めた日本赤十字社も果たせなかった「支援者と被災者をダイレクトにつなぐ大規模支援」を実現した。 その功績が称えられ、2014年、「Prix Ars Electronica」という世界で最も権威あるデジタル・メディア・アートのコンペティション(コミュニティ部門)で最優秀賞にあたる「ゴールデン・ニカ」を日本人として初受賞。 同年、「ベストチーム・オブ・ザ・イヤー2014」も受賞。 主著にベストセラーとなった『人を助けるすんごい仕組み』(ダイヤモンド社)、『チームの力』(筑摩書房)、『構造構成主義とは何か』(北大路書房)、『質的研究とは何か』(新曜社)など。

西條 白木さんの場合は状況が、スタートアップ期とは変わってきています。学生たちと白木さんの会社を研究させてもらってよくわかったのは、結局、児童労働をなくしたいと思ったときに、フェアトレードの恩恵を受けられる人は会社の業績規模と相関するわけです。事業を拡大しないと一部の人しか助けられない。事業規模が10倍になれば10倍の人を助けられます。そのためには、利益を上げていくビジネスモデルをつくらなければいけないし、そういうマインドの社員でチームを組まないといけない。

変化に合わせて、変わることはよいこと

石坂 最近、新卒採用者向けの社長講話で、こんな話をしました。よい会社とは変化していく会社。いまの会社と20年後が同じではやっぱり嫌だよね、と。会社に成長してほしいなら、自分も成長していかないと、会社は変わっていけない。世の中が変わっているわけだから、世の中に合わせて変化し続けることが会社のテーマです。

西條「変わることはよいこと」と言い続けるのは大事だと思います。いままでAという方針でやってきて実績もある。これを変えるとなったときに、メンバーが「前任者のやり方を否定するのか」ととらえると変えにくい。

 そうではなくて、「方法の原理」によれば、どうすればよいかは状況と目的に応じて変わりますから、状況と目的を認識し、会社も成長のステージで状況と目的は変わる。だから、そのときはそのやり方でよかったけど、いまの状況に合ったやり方に変えるべきだといった考え方をシェアしておかないと、表層的なところで「自分たちがやってきたことを否定された」という話になってしまうのです。

 たとえば「ふんばろう」のときは、東日本大震災というあまりに大きな災害が起きて、何千人という人に動いてもらうときに有償にしたらもう、いくらお金があっても足りない。そのチームはボランティアというやり方が一番機能したと思うのです。

 でも、「スマートサバイバープロジェクト」は、震災の教訓を活かして次の震災で一人でも多くの人の命を救うことを目的としているので、数年集中的に活動して終わりというわけにはいきません。そうなったときにはやはり体制を変えなければいけない。

石坂 どっちが正しいかではなく、状況に合わせて機能する方法を選んでいる。

西條 そうなんです。