デザイン思考で欠かせない要素は、プロトタイプ(試作品)です。新製品や新サービスを生み出す時に、いきなり完成度の高い状態を目指すのではなく、まずはプロトタイプ(試作品)をつくり、そこで試行錯誤して完成度を高めていくのです。
パラレルキャリアにおけるゼロベースの立ち上げは、プロトタイプをつくるための訓練に適しています。
自分の「暗黙の前提」を常に見直す
多様性と曖昧さに慣れる、失敗を歓迎する。これまで述べてきた学習効果は、最終的には、自分の「暗黙の前提」を常に見直す、という効果につながります。
人生において、1枚目の名刺の組織の中の人々との交流だけを中心に考えている場合、その組織の常識が、あたかも人生の常識であるかのように思いこんでしまいます。そして、その常識にしたがい、仕事を進めていくことになります。
しかし、多様性と曖昧さに慣れると、業界、会社、職種の違いで、それまで自分が常識と信じていたことがそうではなかったことに気づくことになります。
さらに失敗を歓迎するようになると、さまざまな角度からアイデアを出すことが求められるので「遊び心」が必要です。そして、ひとつの常識にとらわれているとうまくアイデアを出せないことに気がつきます。
こうした過程を経て、自分が常識にとらわれること自体が危険だし、それが自分の暗黙の前提であったというところまで視野が拡大することになるわけです。
何かを考えるときに、「自分」というように、いったん自分という存在を括弧にいれて、あたかも遠くから見つめ直してみるように思考する。この思考の癖が身につくと、積極的に新しいことに取り組むことができるようになります。またアイデアの質と量が飛躍的に向上することが期待できるようになります。