経営再建中のパイオニアが、11月5日に発表される中間決算において、2010年3月期の業績見通し(当期純損失830億円)を上方修正する。新興国市場を中心に、車載機器の販売が上振れしたためだ。
当初は、自己資本比率が7.4%まで転落する危機が想定されていたが、ひとまず、2ケタ割れは回避された模様だ。
かねて、パイオニア経営陣は400億円規模の資金調達(内訳は、増資300億円、借り入れ100億円を想定)が必要と明言してきたが、今回の上方修正によって、「金融機関へ新規融資は求めず、資本増強の規模も200億円を下回る」(ファンド関係者)ようだ。
6月末に施行された改正産業活力再生法の枠組みにより、政府が日本政策投資銀行を通じて、民間企業へ資本注入できるようになった。エルピーダメモリが第1号案件として認定され、パイオニアは“第2号”の座を狙っていた。
具体的には、公的資金100億円、ファンド・民間企業からの資金200億円の合計300億円をかき集める予定だったが、必要な資本増強の規模が200億円以下へと縮小したことを受けて、事実上、公的資金活用策は棚上げになった。
その背景には、「経営陣、金融機関、ファンド、スポンサー企業、政治家、官僚などと、利害関係者が増えれば、まさに日本航空(JAL)のように、情報、思惑が錯綜し、経営が混乱しかねない」(パイオニア関係者)という懸念もあった。そもそも、税金が元手である政府マネーを、6期連続の最終赤字となる企業へ投入することへの世論の反発もあった。
年内までに、パイオニア経営陣は、ホンダ(約25億円の第3者割当増資予定)やファンドによる資本増強策をまとめる見込みだ。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 浅島亮子)