創立2年を迎えた監査法人ウィングパートナーズが、崖っ縁に立たされている。

 公認会計士・監査審査会は2月17日、同監査法人の運営が著しく不当として、行政処分を講ずるよう金融庁長官に勧告した。

 特に審査会が重く受け止めているのが、同法人の内部規定が実質的に機能していなかったこと。監査法人は通常、独自の審査チェックリストを内部に設けている。同法人にもそのリストが当然あるはずだが、所属する会計士の大半がその存在すら知らなかったという。

 それだけではない。監査意見の表明に当たり、監査人は経営者から「経営者確認書」を受け取る必要がある。これは、「監査に必要な資料はすべて提出したこと」を経営者に約束させるもので、監査の信頼性を高めるための監査手続きの一つだ。同法人では、これさえ受け取らずに監査意見を表明していたことも多かったという。

 穏やかでいられないのは、監査を受ける上場企業だろう。同法人の監査担当社数は、2月初旬時点で18社。そのうち、継続企業の前提に疑義の注記が付された企業は16社にも上る。特に昨年9月以降、担当社数は急増しており、なかには今回の処分勧告後に駆け込んだ上場企業すらある。

 じつは、昨年末に同監査法人の担当するある上場企業に、証券取引等監視委員会(SESC)の調査が入っている。その調査結果次第では、同法人に対する金融庁の処分も「かなり重いものになる可能性が高い」(関係者)という。

 もっとも、SESCの調査結果を待たずとも、年度内には処分が下る見込み。審査会の指摘を金融庁が事実と見なせば「一部業務の停止以上の処分が下る」(関係者)と見られ、監査意見が付かず上場廃止に追い込まれる企業も続出しかねない。

(『週刊ダイヤモンド』編集部  池田光史)