梅雨入り目前にして
早くも夏モード全開!

 麦芽党にしてみれば、「ングング」と喉が鳴り止まない、1年で最も美味しい季節の到来である。片や日本酒党はどうか。これがじつにパッとしない、中途半端なシーズンというほかはない。この時節に限って麦芽党に鞍替え(!?)する不誠実な輩が続出するのも無理からぬ話である。

 消費者がこれだから、造り手側の悩みは計り知れない。それでなくとも日本酒の需要が右肩下がりで縮小するなか、とりわけ夏場の著しい落ち込みにいかに対応するかは、酒造メーカーにとってきわめて深刻な問題だろう。

 そこで、メーカーも考えた。“HOTなシーズンにおいしい、季節限定「夏の酒」を”というソリューションである。見た目からして、涼しげそうな淡いブルー系のボトルを使用したり、ラベルに季節感をあしらったり、アルコール度数を下げて飲み易さを強調したり、シャンパンのようにシュワシュワと炭酸を効かせてみたり、と工夫を凝らしている。

選び抜いた7本は前回どおり、先入観が入り込まないよう新聞紙で完全ガードして利き酒を行った

 では、肝要の味のほうは……。

 というわけで、今回は「夏の酒」を題材に取り上げてみた。テーマが前回(酒造好適米「雄町」を利く)ほどにはストレートでないかもしれないが、「夏酒」という定義付けも包括して仕分けしてみたいと考え、“夏限定”と銘打たれた商品あるいは今の時期に向けて蔵出ししてきた商品のなかから事前試飲を重ねて7本を厳選、それを勉強会のメンバーと利き分けた。

「にごり」「おりがらみ」は
“夏”のイメージ?

 今回のテーマに合わせて選んだ7本は以下のとおり。

(1)「作(ざく)」恵乃智 一火瓶囲(三重県鈴鹿市)
(2)「寿喜心(すきごころ)」寿(ことほぎ)純米うすにごり(愛媛県西条市)
(3)「辻善兵衛(つじぜんべえ)」純米吟醸 活性にごり(栃木県真岡市)
(4)「白岳仙(はくがくせん)」 吟生 (福井県福井市)
(5)「羽根屋」純米吟醸 富の香仕込(富山県富山市) 
(6)「春霞」純米吟醸 「霞」うすにごり生夏(秋田県仙北郡)
(7)「来福」純米吟醸「夏の酒」(茨城県筑西市)

 (1)のみが「1回火入れ」で、残る6本はすべて生酒。また、(1)と(5)を除く5本が「(うす)にごり」「おりがらみ」といった、やや白濁した状態の酒であることを付記しておく。