業務担当者がITを高くする
実は、ITを高くするのは業務担当者です。
彼らは、業務を効率よくこなす責任がありますから、できる限りリッチなIT機能を望みます。
安くするために、業務を標準化したり、汎用的なパッケージを使うべきだと言われても、その結果、効率が落ちることは許容しないでしょう。
また、ほとんどの業務担当者は、自分たちのいまの業務が正しく、最も効率的だと信じています。
したがって、業務を変えたがりません。ITを変えると自然に業務も変わってしまいますから、彼らはITが変わることにも反対します。
これが、ITのコストを下げるために汎用のIT部品やパッケージソフトを使おうとすると、大反対が起こり、かえって高くついてしまう理由です。
「ITって高いなー」とは思うものの、自分たちの効率のよい業務を曲げてでもITコストを下げたいとは思っていません。
ITエンジニアがITを高くする
一方のITエンジニアも、ITコストを高くするように行動します。
なぜなら、エンジニアは「コストを下げても誰にも褒められないが、トラブルを起こすと、こっぴどく叱られる」という状況に置かれているからです。
例えば、ハードウェアには十分すぎるくらいのスペックを求めます。
例えるならば、「お土産をたくさん買うかもしれないから大きなクルマがいい」と言いながら、マイクロバスで家族旅行に行くようなイメージです。
万が一、ハードウェアの容量が足らずにトラブルが起きると、怒られるのはエンジニアだからです。
そしてプロとして、100%完璧なテストをやろうとします。
きちんとしたテストをやるのはよいことですが、程度問題です。
「論理的にすべてのパターンを網羅するためには、何億通りものパターンを虱潰しする必要がある」という場合もあります。
それが果たして経営として必要なのか、立ち止まって考えるべきでしょう。
例えば人の命に関わるITと、社内だけで使うITとでは、求められる完璧さは違うはずです。
もう一つ。トラブルを恐れるあまり、新技術に後ろ向きなエンジニアもいます。当たり前ですが、新しいことにチャレンジするとトラブルの可能性は上がります。
ただしそういった技術は新しいだけあって、大幅にコストダウンできるなど、経営的にもメリットがあることが多い。
経営幹部があまりにトラブルを糾弾し、完璧を求めすぎると、こういうチャレンジができないIT部門になってしまいます。