ITコストを下げるのは、経営幹部しかできない

 業務担当者も、ITエンジニアも、別にコストを高くしようと思っているわけではありません。自らのミッションに忠実なだけです。
 でもそれが、ITコストを押し上げる力学になってしまう。切ないですよね。
この状況を打破するには、経営サイドからの強い関与が必要です。

 ただし、現場からの報告を見て「もっと下げなさい」と命じたところで、「これは必要な金額です」と言い返されるだけです。

 もっと踏み込んで、業務部門に対しては「この機能がなくて、一見この部門の業務効率が落ちたとしても、全体としてはメリットがあるので我慢して欲しい。その代わりに担当者を1人増やすから」などと経営視点を説明します。

 IT部門に対しては、経営として目をつぶることのできるリスクは許容するので、過度に作り込んで費用をかけ過ぎないように、財布の紐を絞る牽制が必要となります。

「俺はわからんから、ユーザーの要望を十分聞きなさい」という言葉も、一見物わかりがいいように見えて、経営者としての役割放棄です。
よりお金がかかる方向へプロジェクトを導くことになるからです。

 あるプロジェクトでは、オーナーである役員が
「このプロジェクトでは夢を語らない。動くITを安く速く作れればいいんだ」
というセリフを、重要な意思決定ごとに、何度も何度も仰っていました。
 そうしないと、すぐに現場は費用がかかる方、かかる方に戻ってしまうからです。

 経営幹部が「ウチのITはカネばかりかかる」などと、他人事のように呟くことがいかにおかしいか、こうして見てくるとご理解いただけるでしょうか。

 わたしが『会社のITはエンジニアに任せるな!』という本を出したのは、
「任せっきりにせずに、ちゃんと関与しないと、どんどん高くなっちゃいますよ」という意味も込めているのです。