伝えるときは「テクニック」より、
「たくさん」「日常のなかで」が重要

たとえば、取引先との対話や社内会議の場も、ビジョン伝達のチャンスになります。

取引先で、リーダーであるあなたの「うちは○○な会社です」という自社紹介に耳を傾けているのは、お客様だけではありません。
同行している部下もまた「そうか、うちは○○な会社なのか……」と思いながら聞いています。

会議でも同じです。つねに、自社のビジョンに照らし合わせながら意思決定することを習慣にすれば、メンバーとともに、ビジョンを深く掘り下げて考える機会を持つことができます。

つまり、ビジョンの伝達には、周到に用意された演出や高度なプレゼン技術は不要です。それよりも、ビジョンを意識する機会を「いかにたくさん」日常のなかに盛り込めるかが重要なのです。

まずはリーダー自身が
「腹落ち」しているか?

じつのところ、「ビジョンを伝える」という仕事において最も重要なのは、現場に語りかける以前に、当のリーダー本人が心からそのビジョンに信念を抱いているかということです。

すでに見たとおり、創業社長でもない限り、ビジョンをゼロベースからつくり上げたリーダーというのはまずいらっしゃらないでしょう。

先代から経営理念を引き継いだ社長はもちろんですが、中間管理職の方々も「本当にそれがあなたの信念ですか?」と聞かれれば戸惑うケースのほうが多いのではないでしょうか。

しかし、まずもってリーダー本人がそのビジョンに共感していなければ、どんなに伝え方を工夫したところで、メンバーの心の底にまでビジョンが浸透することはありません。

ビジョンに対して表面的に共感したふりをしていても、メンバーからは容易に見透かされます。「どうしたんだ? うちのリーダーは急に『きれいごと』を言い出したぞ……」と思われるのが関の山です。