日本の教育界の
風穴となり新風を吹き込みたい
石川 小さな学校であるにもかかわらず、ISAKは教育界に大きなインパクトを与えていると思うんです。そのあたりもお話しいただけますか?
小林 これはまったく予期していなかったことなんです。これまで日本の学校の枠組みではここからここまでしかできないという既成概念があったと思うんですよね。その枠の思いっきり外に、ポコンとISAKができたことによって、「あれもアリだったんだ!」という認識が広まって、それによって既存の枠を超えた試みを始める学校ができはじめている気がします。公立、私立問わず、たくさんの教育関係者の方々が見学にいらしてくださいます。
草の根的な活動もしています。私たち3年前から、年に1回「教員ワークショップ」を開催しているんです。というのも、新しい教育に取り組んでいる先生って、現場では「変わってる」なんて言われて案外孤独だったりするんですよね。そういう人たちが一堂に会することによって情報共有ができます。「なんだ、私だけじゃなかったんだ」「僕らももっと新しいことをやってみよう」「一緒にやろうよ」となれば、その先には何百人何千人の生徒がいるわけですよね。そういう先進的で意欲的な先生方が集まる場になれればいいなと思っています。
石川 うん、すごく大事なことだね。まずISAKができたことで、みんなに勇気を与えられたと思う。しかも教育内容が日本で良しとされている教育方針の枠にはまりきらないスケール感があって、実例を作ることによって、柔軟で新しい考えを持った先生方を励ましたよね。
小林 「ISAKのような学校をもう2~3校作るんですか?」と周囲に聞かれることがあるのですが、それは違います。私たちが唯一絶対の解ではないし、様々な選択肢が増えていくことが大事なんですよね。昨年から、官邸で開かれる教育再生実行会議のメンバーを拝命しているのですが、幅広い個性や多様化するニーズによりきめ細かく対応できるよう、多様な形の教育が行われやすい環境を整えることが大切だと思い、政策提言などもさせていただいています。
石川 既成概念の枠を一回はずして、レールじゃないところにも道があるんだよというのを、ひとつのカタチとして見せたのは大きいよね。ISAKが今後、いろんな子どもたちを生み出していくことによって、大学の偏差値だけじゃなくて、その子が持つ能力を育てることがいかに大事かということがわかることで、教育の仕方が今後はきっと変わってくるでしょうね。
小林 ISAKを基軸に、いろんな変化が起こる場に関わらせていただくようになるのは、まったく予期していなかったことです。今後も、小さいながらも教育界の風穴になっていろんな新風を吹き込んでいけるように頑張りたいですね。それが私たちの使命だと思っています。