「大金を集められる話し方」とは?

 世界の野心的なエリートが学んでいるエグゼクティブMBA(EMBA)にももちろんプレゼンの授業があり、自身もバリバリの投資家であり、いくつものベンチャーを成功させているフレディという教授による講義はとくに印象に残っている。

「あなたたちが事業を起こしたいなら、当然投資家からお金をもらわなければならない。そのノウハウを私が教えましょう

 と言って彼の授業は始まった。
 端的に言って、彼の教えのポイントは次の2点に集約される。

○決断する立場の人が「どんな状況にあるのか」を理解する
○決断する立場の人が「知りたがっていること」を話す

 とてもシンプルだが、内容は奥が深い。
 まず、決断する立場にいる人が「どんな状況にあるのか」ということだが、これははっきりしていて、第一に考えなければならないのは、「誰もが自分の時間を貴重なものと考えている」ということだ。そして社内でも社外でも、相手のレベルが上がれば上がるほど時間がなく、当人が時間を貴重と考えている程度は高い。

 相手によっては、「相手の1分には何百万円もの価値がある」というくらいの意識で臨んでも大げさではない。

 つまり、どんなにすばらしい内容でも、時間がかかるようではプレゼンとしては失格なのだ。

 出資者を探しているベンチャー起業家などはよく「エレベーターピッチ」(同じエレベーターに出資者と乗り合わせたくらいの時間でも口説けるプレゼン)を鍛えろと言われるが、これが大事なのはベンチャー起業家だけではない。

 相手がエグゼクティブクラスになると、何かを売り込むために時間を取れるのはせいぜい3分から5分。その時間で「これはちょっとおもしろそうだな」と相手に思わせることができれば、「来週、私のオフィスに来ないか」となり、さらに20分の時間が与えられる。そこで説得力を持って話ができれば、さらに機会が得られることになる。

 要するに、3分から5分でまとめるプレゼン力を持たなければ、そもそも土俵にも上がれないのだ。

 そしてもう一つ、「相手には、恐ろしい数の依頼が日々舞い込んでいる」という事実も理解しておくべきだろう。当然ながら、自分が何かを依頼したい相手は、力があるほどやはり舞い込んでくる依頼の数が多い。授業をしてくれた先生のところにも、毎週200件以上の投資依頼が届くという。

 だから、自分は「ワン・オブ・ゼム」に過ぎないということを意識して「プレゼン内容に(時間を割いて聞くだけの)インパクトがあるか」を徹底的に吟味しなければならない。

 とかく日本人はプレゼンが下手だと言われるが、その多くが「無駄な説明が多く、インパクトが弱い」。それはプレゼン用の資料を見れば一目瞭然で、文字が多く、細かなデータを載せている反面、「何が言いたいのか」が即座にわからない。

 これでは勝負にならない。欧米人はリップサービスが得意だから「なかなか、すばらしいプレゼンだったよ」「非常に充実した内容だった」などと笑顔でほめてくれるかもしれないが、コンペの場合、話しはじめて30秒で負けが決まっていることも少なくない

 その他大勢に比べて自分が抜きん出ている部分はどこかを見極め、そのポイントを冒頭から強調する。この意識でプレゼンを始めなければ、そもそもまともに聞いてすらもらえない。