消費の増加にいちばんつながる
相続税率と贈与税率の組み合わせ方は?

出口 景気をよくするうえでは、消費を活性化させる必要がある。そのために、例えば相続税率100%と贈与税率0%を組み合わせればいいのではないか、と考えています。マイナンバー制度が整備されればキャピタルフライトは意味がなくなるでしょうし、中小企業の事業承継は別として、一般の人が亡くなったら国がいったんその財産を税金として召し上げるのです。それが嫌な人は生きているうちに寄付をするか、遺言で寄付先を明記する、という仕組みにする。
 現在のように、90代の人が亡くなって、70代の人が相続している状況では、消費が好転するはずがない(笑)。血がつながっていなくてもいいから、若い20~40代の経済的に苦しい現役世代に寄付をする、あるいは希望の公益団体に寄付をするという仕組みにして、贈与税をゼロにすると言えば、おじいさん・おばあさんも簡単に選択できると思うのです。こういう制度は荒唐無稽でしょうか。

井堀 いえ、相続税については、たしかに100%課税すべしという議論やゼロ%でもいいという議論など両極論があり得ます。
 ただし実際のところ、相続税を極端に高くすると、贈与に流れます。つまり、生前贈与と相続は実質的に同じとも言えますから、片方だけ税金を高くしても効果が薄いのではないか、という反論が起こるかもしれません(笑)。
 あとは、相続税100%・贈与税0%としてしまうと、お金を持っている人の子どもだけが助かって、お金を持っていない人の子どもは助からないおそれもあります。日本は米国等と違って寄付文化が根づかず、自分の親族だけに継がせたがる空気が強いですから…

出口 今も、その傾向はあまり変わらないでしょうか。

井堀 そうですねえ。公益団体に寄付する場合は贈与税をゼロにするとか、ある程度誘導する方策はあり得ますが、効果がどの程度あるか。
 とはいえ、相続税を高くしてきている数年来の流れについては、私もよくないと思っています。相続は1回限りの行為なので脱税や節税のインセンティブが高まりますから、限界税率を高くして脱税を呼び込むような状況はあまり好ましくない。だから、相続税をむしろ下げて、相続と贈与のバランスに配慮してどう税金をかけるか考えるべきだ、と思います。基本的に相続税は廃止して、消費税に取り込む。相続も消費だと考えて、消費税をフラットにかければよいのではないか、と。

出口 相続も消費税に取り込むのは確かに一案で、それが一番いいかもしれませんね。