会社のイメージで自分との相性を図るのはキケン?

曽山 「マルチエントリー」を大切にしているのには、もう一つ理由があります。僕ら企業側も、当然学生から選ばれる立場なわけですが、インターンシップをせずに選考プロセスを一つにした場合、「サイバーエージェント」という社名や会社規模、そしてその人が持つ個人的なイメージだけでエントリーの有無を決められてしまうんですね。偏った人材が集まらないためにも、いろんな入り口をつくることができればと思っています。

熊谷 就活塾「我究館」で学生と触れ合うなかで感じるのは、サイバーエージェントさんは「キラキラ」「美男美女」といったイメージが学生に浸透していること。「自分はキラキラ系ではないから無理だろう」とエントリーをあきらめている学生がいるとすれば、すごくもったいないですよね。

曽山 その通りです。社内には、確かに明るくてポジティブで、人間的な魅力にあふれる人材がたくさんいます。服装が自由な分、責任のあるポジションにつく人間は、見た目にも気をつかうようになりますし、雰囲気やエネルギーは変わってくるかもしれません。

熊谷 そういったイメージをネガティブに捉えて躊躇している学生には、どうアプローチされていますか?

曽山 それ、理系の学生にありがちなんですよ(笑)。われわれがぜひ一緒に働きたいと思う人材に、「自分は地味だから向かない」なんて思われていたとしたら、とんでもない!もっと僕らの実像を知ってもらえる努力をしなきゃいけないんですよね。

 いわゆる「キラキラ」イメージの社員がいる一方で、寡黙で実直な社員もいるんです。しかし彼らも含めて、うちの社員は全員、目が輝いています。こうした外見のイメージだけではない、さまざまなタイプの社員がいて、全員が仕事への熱意や情熱を持っていることをインターンを通じてわかってほしいと思います。先ほどお話した『就活チャンネル』も、もっと僕らを知ってもらいたいという思いから生まれたものなのです。

熊谷 僕も『就活チャンネル』を視聴させていただき、大変驚きました。社員や内定者の方がたくさん出てくるので、リアルな雰囲気がひしひしと伝わってくるんですよね。

曽山 ありがとうございます。就活生にはサイバーエージェントの実態をありのまま知ってもらいたいので、予定調和なしにすべてをさらけ出せる「生放送配信」にこだわっています。「過去の番組」も、基本的に生放送をノーカットのままアーカイブ化しています。

熊谷 すべてをさらけ出す狙いは、他にもあるのですか?

曽山 キレイな部分だけを見せるのは簡単です。けれど、それで優秀な学生が採用できたとしても、あとで「こんなはずじゃなかった」となるのは、お互いに不幸ですよね。それは可能な限り避けたいです。

 実は、私自身も新卒で入った会社で似たような経験をしたことがあるんです。就職活動中は、それこそ『絶対内定シリーズ』を読み込んで、自己分析用のワークシートもやりきりました。「自分がやりたいこと」を考え抜いて、おかげで人気企業に就職できたのですが、「会社分析」が全然足りていなかったんです。

仕事内容にはやりがいがあったものの、その会社では30歳にならないと係長試験を受けられないことを知らなかったわけですね。
「そんなスローなスピードでは、自分がやりたいことができない!」などと焦燥感にかられ、当時まだ社員数が20人ぐらいだったサイバーエージェントに転職したというわけです。

 ミスマッチ採用を防ぐべく「すべてをさらけ出す」採用方針を行っているのは、そういった背景もあります。

(つづく)