日立製作所Photo:123RF

近年、世界的に大手企業の優勝劣敗が鮮明化している。要因の一つとして、企業自身が自己変革する意識の差があるだろう。その中で、デジタル技術の活用は重要なファクターだ。経営トップがオープンな姿勢で新しい発想を取り込み、高付加価値なモノやサービスを創出する体制を整えるべきだ。(法政大学大学院教授 真壁昭夫)

 近年、世界的に大手企業の優勝劣敗が鮮明化している。過去5年間のわが国の株価推移を見ると、重電分野では日立製作所と東芝、自動車ではトヨタ自動車と日産自動車、電機分野ではソニーとパナソニックの株価推移が二極化している。

 その要因の一つとして、企業自身が自己変革する意識の差があるだろう。そうした意識を持ったトップの発想が、企業の長期の成長を左右するといっても過言ではない。今後、企業の優勝劣敗は一段と鮮明化するだろう。

 その中で、デジタル技術の活用は重要なファクターの一つだ。世界経済のデジタル化は加速し、「新・産業革命」というべき「脱炭素」も進む。わが国企業が加速する非連続的な環境変化に対応するためには、経営トップがオープンな姿勢で新しい発想を取り込み、IoT技術などを積極的に活用して、高付加価値なモノやサービスの創出に取り組む体制を整えるべきだ。

日本の働く人の給料は増えていない
GDP成長は中国と米国、ドイツにも劣る

 1990年代初頭にバブルが崩壊して以降、わが国では働く人が受け取る給料が増えていない。毎月の勤労統計を確認すると、事業所規模30人以上の場合、90年に37万169円だった月間の現金給与総額は、19年で37万1408円だ。89年と2019年の1人当たり名目国内総生産(GDP)を比較すると、わが国が1.6倍だったのに対し、中国は25.2倍、米国とドイツは2.9倍増だ。