資本主義を覆すテクノロジー封建主義、アマゾンやフェイスブックは今や荘園巨大テック企業の封建領主化が資本主義の終焉をもたらす?Photo: REUTERS/AFLO

『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』の著者ヤニス・バルファキス元ギリシャ財務相による連載。今回のテーマは、テクノロジー封建主義の台頭です。アマゾン・ドット・コムやフェイスブックなどのプラットフォームはもはや寡占企業というより、私的な封建領地や荘園のように運営されていると筆者は指摘します。

 資本主義はこうして終わる。革命による爆発ではなく、進化によりひっそりと息絶える。資本主義が封建主義をひっそりと少しずつ駆逐していき、ある時点で人間関係の大部分が市場ベースになって封建主義が一掃されてしまったように、今日の資本主義も、新たな経済様式によって覆されつつある。それは、「テクノロジー封建主義(Techno-Feudalism)」だ。

 資本主義の崩壊については、特に左派の側から早まった観測が数多く見られたが、テクノロジー封建主義は、それに続く本格的な主張である。しかし、今回ばかりは現実であっても不思議はない。

 その手掛かりはしばらく前から顕在化していた。はっきりと反対方向に動くべき債券市場と株式市場が平行して急上昇し、一時的な下落はあっても、常にその足並みはそろっていた。同様に、資本コスト(要するに証券保有の見返りに求められるリターン)は、ボラティリティとともに低下していくはずだが、将来のリターンが不確実になる中で、むしろ上昇している。

 何か深刻な事態が進行しているという最も明白な兆候が現われたのは、恐らく昨年8月12日のことだ。この日、2020年1月から7月の間に、英国の国民所得が20%以上も減少したことが判明した。最も厳しい予測さえ大きく上回る減少幅である。

 だがその数分後、ロンドン証券取引所の株価は2%以上も上昇した。これに類することが起きた例は過去にない。つまり、金融は実体経済から完全に乖(かい)離してしまったのだ。

 しかし、こうした前例のない展開は、私たちがもはや資本主義のもとで暮らしていないことを本当に意味しているのだろうか。何しろ、資本主義はこれまでにも根本的な変化を経てきている。私たちは資本主義の最新の生まれ変わりに備えるべきではないのか。いや、私にはそうは思えない。

 私たちがいま経験していることは、単に資本主義がまた新たな姿に変わっただけにはとどまらない。もっと重大で厄介な何かだ。