NHK「プロフェッショナルの流儀」で紹介され話題沸騰! 1200年続く京都の伝統工芸・西陣織の織物(テキスタイル)が、ディオールやシャネル、エルメス、カルティエなど、世界の一流ブランドの店舗で、その内装に使われているのをご存じだろうか。衰退する西陣織マーケットに危機感を抱き、いち早く海外マーケットの開拓に成功した先駆者。それが西陣織の老舗「細尾」の12代目経営者・細尾真孝氏だ。その海外マーケット開拓の経緯は、ハーバードのケーススタディーとしても取り上げられるなど、いま世界から注目を集めている元ミュージシャンという異色の経営者。そんな細尾氏の初の著書『日本の美意識で世界初に挑む』がダイヤモンド社から発売された。閉塞する今の時代に、経営者やビジネスパーソンは何を拠り所にして、どう行動すればいいのか? 同書の中にはこれからの時代を切り拓くヒントが散りばめられている。同書発刊を記念してそのエッセンスをお届けする本連載。好評のバックナンバーはこちらからどうぞ。

京都西陣織の老舗「細尾」は、なぜ徹底的に「美」にこだわるのか?Photo by Mitsumasa Fujitsuka

美しい環境は人を変える

 細尾(京都市中京区)は二〇一九年に、約一年をかけて、五五年前に建てた本社社屋を全面的にリニューアルしました。それが美意識を醸成する建築、「HOSOO FLAGSHIP STORE」です(写真参照)。

 HOSOO FLAGSHIP STOREの建築は、西陣織の協業の精神を、建築の分野へと応用したものです。

 一つの建設会社にまるごと施工を委託するのではなく、左官や鍛冶、大工、箔貼りといった個々の専門技術を持った様々な職人たちを独自に結びつけることで、唯一無二の独創的な建築が生まれました。

 二〇以上もの工程をそれぞれのスペシャリストである職人たちの協業から革新を起こしてきた西陣織のDNAを、建築設計に取り入れたつくり方でした。

 効率のためではなく、究極の美を追求した建築でした。

 こういった投資をする経営者はあまり多くないのではないでしょうか。