ICT授業で使われているツール
ICT教育の学校への導入度合いは私立と公立間ではもちろん、私立間でもその差は大きい。学校ではいまでもファクスでのやり取りが多用されており、教員のITリテラシーは一般企業に大きく後れを取っている。たまたまその学校にICT教育に関心を持ち詳しい教員がいると、その教員が主導する形で導入の進む例が多いのだ。
新型コロナウイルスのまん延が、いや応なしのICT化を進めている。首都圏私立高校から寄せられた追加緊急アンケートの回答を見ると、その様子がよく分かる。ICTを活用した遠隔授業の導入時期を答えてきた11校のうち、2020年からが7校(3月1校、4月と5月が3校ずつ)で、2校は2021年度からの導入を検討している段階だ。以前から活用してきたのは2015年4月の八千代松陰(千葉)と2018年4月の鵠沼(神奈川)の2校だけだった。
教員も泥縄での対応を余儀なくされている。例えばおおむね課題提出を課している実技系の科目では、ある学校の美術教師はやることがないので「校内のペンキ塗りをします」と自嘲気味に語っていた。
一方で、5教科の担当はてんてこ舞いの様相を呈している。教員も数人の当番が出勤する以外は原則登校禁止の学校が多い。浅野(神奈川)では各授業の担当者がプリント等で学習指示をする一方で、動画配信を予定しているなど、まさに同時進行で遠隔授業に取り組んでいる。
こうしたICT活用による遠隔授業では、生徒が使う端末が1つの問題となる。アップルのiPadやGoogleのChromebookを全生徒にすでに持たせているような学校は、事前に使用するアプリなどをインストール済で、学校が集中的に管理して遠隔授業の実施もスムーズに行える。中高一貫校でいえば、開智未来(埼玉)などはiPadを、八千代松陰はChromebookを全生徒が利用している。
しかし、ほとんどの学校ではそうはなっていない。品川女子学院(東京)やカリタス女子(神奈川)、巣鴨(東京)などのように、各家庭の使用状況に応じている学校が多数派である。自分の端末を学校に持ちこんで活用している鷗友学園女子の例は最後に見てみたい。
また、京華女子(東京)のように、「生徒に1人1台タブレットを配布しているが、各家庭の通信環境により通信量の制限が出てしまう」という実情を指摘する学校もあり、動画配信による授業の円滑な実施に至るまでの道のりは長い。
次に、先駆的な私立校の実態を見てみよう。