法務・税務(2) サブカテゴリ
第135回
ウーバーやエアービーアンドビーなど、ネットを活用したシェアリングエコノミーのさまざまなビジネスモデルが生まれているが、盲点は、税金や社会保障の負担の責任がはっきりしないことだ。所得の情報や税負担などの実態がみえない「ブラックボックス」が、新ビジネスの拡大とともに広がっている。

第134回
「働き方改革」がめざす多様で柔軟な働き方を実現するには、雇用形態によって違う税や社会保障の不公平をなくし、賃金や労働時間の規制とも整合性のあるものにしないといけない。改革の実行計画にはこの「セーフティーネット」の議論がすっぽり抜け落ちている。

第133回
子育ても、年金や医療と同じように社会保険でという「こども保険」の創設を、小泉進次郎氏ら自民党若手議員が提言した。増税が政治的に難しい中で、新たな問題提起だが、子どものいない世帯も保険料を払うのか、現役世代の負担が増える、などの声も上がる。子育ての負担をどの世代でどう担うのか、を考える議論の起爆剤になりそうだ。

第132回
トランプ政権の税制改革の柱の一つである国境調整税(正式名称は「仕向地課税キャシュフロー税」)は、法人税の課税ベースを、所得からキャッシュフローに変えたうえで、輸入に課税し輸出を免税する国境調整を行うというものであるが、わが国をはじめとする、今後の世界の税制改革に与える影響は大きく、わが国も、なぜ米国がこのような税制を導入したいのか、きちんと学ぶことが必要だ。

第131回
ふるさと納税制度の不合理は返礼品の過熱競争だけにあるのではない。2000円の「自己負担」だけで済むのは、自腹を切るという寄付制度の本来の趣旨にそぐわない。税の控除はNPOなどへの寄付税制と同じにとどめるべきだ。

第130回
筆者は、83年から85年までの間、レーガン大統領の地元ロスアンジェルス総領事館で経済担当領事をしていた。自身の記憶をたどりながら、レーガノミクス(第1期)が、財政赤字の拡大、金利高騰、双子の赤字を招いたという点に焦点を当てて、レーガノミクスとトランポノミクスの経済政策の比較をしてみたい。

第128回
新年早々トランプ次期大統領は、トヨタに新設する工場について「pay big border tax.」とツイートした。この「border tax」発言を、新聞各紙は「関税」と訳していたが、それは「誤訳」だ。これは「仕向地課税(最終消費地課税)法人税」である。

第127回
ウーバーやエアビーアンドビーなどのシェアリングエコノミーは、新たなビジネスモデルで、われわれの経済行動に大きな変化や影響をもたらす。新たなビジネスの開拓であると同時に既存の業態への挑戦でもあり、規制の在り方などが議論されているが、一方でそこで働く人々の税や社会保険料の問題も浮上している。

第126回
トランプ米次期大統領は、アップルやグーグルといったIT多国籍企業などが海外にため込んでいる利益を米国に還流させることを狙った法人税改革を掲げている。そのための2つの改正案、つまり低税率国に留保されている利益への「還流税制」と、法人税の仕向地課税への変更について、実行可能性を探ってみたい。

第125回
トランプ大統領の誕生が世界を揺るがせている。大幅な減税とインフラ公共投資が米国経済を活性化するのではないかという期待と、膨れ上がる財政赤字がレーガン時代のような経済混乱をもたらすのではないかという懸念が交錯している。今後どうなるのか。

第124回
欧州委員会は、米アップルの租税回避措置に対し、130億ユーロ(約1兆5000億円)を、過去にさかのぼって追徴せよと命じた。米国政府は、「さかのぼって課税するというのは、EUへの投資を損なう決定だ」と欧州委員会に抗議したが、もう一つ力が入っていないようにも見える。米国の本音を探ってみたい。

第123回
AIなど第4次産業革命への対応が順調に進んだ場合には、大量の失業者やこれまで経験したことのない所得格差などが生じる可能性がある。そこへの財源の対応を検討しておくことが必要だ。その場合、「AIから生み出す付加価値に課税していく」ことしか方法はない。

第122回
配偶者控除の見直しが来年度税制改正の大きな課題となっている。これまでたびたび見直しの必要性が指摘されながら、今日まで放置されたこの制度を抜本的に見直すことの意義は大きい。

第121回
安倍政権の経済政策の内容は、経済再生・デフレ脱却に偏りすぎており、税制・社会保障制度の根本的な議論や財政再建問題にはほとんど手が付けられない、アンバランスなものになっている。アベノミクスに欠けていると思われる、税制や社会保障の議論を、一体改革のコンセプトを原点に立ち返って見直すことで、日本経済を活性化させることを提案したい。

第120回
人工知能(AI)の発達で仕事を奪われる中間層が続出するという予測を、政府やシンクタンクが公に発表するようになってきた。欧州では、ベーシックインカム(BI)によってそうした人々の生活を保証しようという議論もある。果たしてその議論は現実的か。

第118回
英国の国民投票ではEU離脱という結果が出た。この対立構造の背景には、貧困と格差がある。日本でも、所得分布、資産分布の両面で中間層が二分化する、欧米同様の状況が始まっている。これまでのアベノミクスは失敗したのだ。では、今後どうするべきか。

第117回
この参議院選挙から選挙権年齢が18歳以上に引き下げられ、新たに240万人程度の有権者が増えることになる。この機会に、わが国の世代間の負担構造がどのようになっているのかを考えてみたい。その構造は、若者にとって不利なシルバー民主主義そのものだ。

第116回
安倍政権による消費増税延期は、大きな波紋を広げた。国民全員に負担増を求める消費税は、これまで多くの政権の基盤を揺るがせてきた。しかしこのままでは、日本の社会保障の充実も財政再建も図れない。増税延期から見えてきた課題を4点にまとめてみた。

第115回
安倍総理は、消費増税の先送りを決断したようだ。それだけならまだしも、財政出動という小泉内閣以降葬られてきた政策を復活する。全てサミットの議論のせいにしてのことだ。これ以上の茶番劇は見当たらない。アベノミクスはなぜ失敗したのだろうか。

第114回
パナマ文書問題で浮き彫りになったことは、脱税の問題とは別に米系多国籍企業を中心とする「租税回避」の問題である。アグレッシブな租税回避は、企業倫理に関する問題だけに、日本型コーポレートガバナンスの成熟度が試されていると言える。
