野口悠紀雄
第51回
消費税問題が注目される総選挙だが、与野党ともに、財政再建は事実上、“放棄”している。それを可能にしているのが、国債を増発しても金利が上がらなくなっている日銀の異次元緩和策だ。増税や財政再建を考えるなら、金融緩和をこれ以上、続けるのかをはっきりさせないといけない。

第50回
仮想通貨の運用には電子証明が必要。ところが、量子コンピュータが実用化すると、現在の暗号システムに依存する電子署名は、有効でなくなる可能性がある。それに対する解決策の1つとして「ランポート署名」がある。

量子コンピュータが実用化されれば、インターネット上の取引で用いられる暗号が解読され、ネットの安全システムが破壊される懸念が指摘されているが、量子コンピュータでも破れないさまざまな暗号が提案されている。

第48回
インターネット上の取引で用いられる暗号を解読できる可能性を持つ量子コンピュータの実用化が近づいている。ネットの安全システムは破壊されるのか。量子コンピュータにもできることと、できないことがある。

仮想通貨などのネット上の取引は暗号化されたシステムで行われている。記録などを改ざんしようにも膨大な計算作業がかかるようにして不可能にしているのだが、飛躍的な高速処理が可能な量子コンピュータが実用化されれば、暗号の安全性が脅かされるリスクがある。

第46回
企業が独自に仮想通貨を発行、投資家から出資を受け、さらにその仮想通貨を取引所に上場、売却して資金を調達する新手法が急拡大している。ネットを通じ世界中の投資家から資金を得られ、ベンチャーキャピタルからの調達と匹敵する存在感だ。だが値上がりを狙ったバブルの様相も否定できない。

第45回
日本では仮想通貨は値上がり益を求める投機の手段として普及しているが、世界の動きは違う。ウェブでのコンテンツ有料配信の少額支払いを可能にする、新しい原理や技術を使ったさまざまな仮想通貨が生まれている。このままでは世界の動きから取り残される。

第44回
取引能力拡大のための新規格導入による対立から、ビットコインのほかに,新しい仮想通貨が生み出された。どちらが生き残るのか。仮想通貨間の競争の勝敗を決めるのは、使いやすく便利なこと。つまり利用者にとってどちらの貨幣「価値」が高いかだ。「良貨が悪貨を駆逐する」世界だ。

第43回
ビットコイン普及のカギを握る「拡張性」問題を解決する切り札が、取引の当事者が電子署名で約束した一定のルールのもとで送金するライトニングネットワークだ。少額の高頻度での取引が可能になり、利用が飛躍的に増える可能性がある。

第42回
新規格導入の主導権争いで「分裂」も予想されたビットコインだが、開発者やユーザーの提案を折衷した形の案がとりあえず採用され、ひとまず落着した。だが利用が増えれば常に「拡張性」の問題で対応を迫られることに変わりはない。

第41回
利用が急増するビットコインの処理能力をあげるシステム「拡張」の仕様などの刷新をめぐって開発者やユーザー入り乱れて議論が続くが、一部の陣営が8月1日前後に、規格の刷新を強行する可能性がある。ビットコイン分裂が現実味を帯びている。

第40回
ビットコイン普及のカギは、クレジットカードなどによる決済に比べ格段に落ちる取引の処理速度を上げることだ。利用が増えるのに伴い、システムをどういうやり方で「拡張」するかを巡って専門家の間で活発に議論が続いている。

第39回
ビットコインなどの仮想通貨が暴騰しているが、「値上がり期待」だけの購入は暴落の危険もあり、健全な姿ではない。送金手段などで利用が広がる中で、ビットコインを使って新しいビジネスをどう生み出していくか、そんな発想が重要だ。

過剰労働是正などの「働き方改革」の実効をあげるには、、規制一辺倒ではなく「経済原理」を活用することだ。残業に対する賃金の「割増率」を柔軟に設定したり、会社の外でもやれる仕事をアウトソーシングしたりすれば、労使の合理的な計算にもとずいて労働時間も適正化される。

労働市場の流動化は、企業が非正規化で辞めさせやすくするのでなく、中途採用を増やせるようにするのが目的だ。それには規制緩和で企業が成長する環境を作ることだ。雇用政策は産業政策であり、雇用を増やす産業政策で大事なのは規制緩和だ。

第36回
日本の賃金水準が下がっているのは産業構造の変化が根底にある。医療や福祉のように、パートに頼らざるを得ない生産性の低い産業のほうが成長率は高く、就業者のパート比率が高くなったからだ。全体の賃金上昇は、生産性の高い産業が成長することでしか実現しない。

第35回
働き方改革が目指す「同一労働同一賃金」はスローガン倒れだ。正規と非正規の賃金格差は仕事の内容に差があるからで、非正規雇用が増えたのは経済の構造変化が原因だ。形式的に行われれば正規社員の給与引き下げ圧力になる。

第34回
「働き方改革」で超過労働抑制が打ち出されたが、「過労死ライン」の長時間労働は減っていない。自宅に帰ってからも働く人が増えれば、仕事量は変わらずに「体のいい賃金カット」で終わる。労働生産性を上げないとそうなる。

第33回
個人が、フリーランサーとして働き、副業や兼業で、ウェブを通してさまざまな情報コンテンツを有料配布する社会がもうすぐ来る。ネックになっていたのが課金システムだが、仮想通貨(ビットコインが普及すれば簡単にできる。フリーランサーの可能性が広がる。

ビットコインの送金は、国内だけでなく海外送金でコストの安さなど、銀行よりさらに優位性を持つ。途上国との貿易拡大や安い労働力が活用できるなど、ビットコインによる送金システムを確立することは、日本の成長戦略としても重要だ。
