
野口悠紀雄
第46回
企業が独自に仮想通貨を発行、投資家から出資を受け、さらにその仮想通貨を取引所に上場、売却して資金を調達する新手法が急拡大している。ネットを通じ世界中の投資家から資金を得られ、ベンチャーキャピタルからの調達と匹敵する存在感だ。だが値上がりを狙ったバブルの様相も否定できない。

第45回
日本では仮想通貨は値上がり益を求める投機の手段として普及しているが、世界の動きは違う。ウェブでのコンテンツ有料配信の少額支払いを可能にする、新しい原理や技術を使ったさまざまな仮想通貨が生まれている。このままでは世界の動きから取り残される。

第44回
取引能力拡大のための新規格導入による対立から、ビットコインのほかに,新しい仮想通貨が生み出された。どちらが生き残るのか。仮想通貨間の競争の勝敗を決めるのは、使いやすく便利なこと。つまり利用者にとってどちらの貨幣「価値」が高いかだ。「良貨が悪貨を駆逐する」世界だ。

第43回
ビットコイン普及のカギを握る「拡張性」問題を解決する切り札が、取引の当事者が電子署名で約束した一定のルールのもとで送金するライトニングネットワークだ。少額の高頻度での取引が可能になり、利用が飛躍的に増える可能性がある。

第42回
新規格導入の主導権争いで「分裂」も予想されたビットコインだが、開発者やユーザーの提案を折衷した形の案がとりあえず採用され、ひとまず落着した。だが利用が増えれば常に「拡張性」の問題で対応を迫られることに変わりはない。

第41回
利用が急増するビットコインの処理能力をあげるシステム「拡張」の仕様などの刷新をめぐって開発者やユーザー入り乱れて議論が続くが、一部の陣営が8月1日前後に、規格の刷新を強行する可能性がある。ビットコイン分裂が現実味を帯びている。

第40回
ビットコイン普及のカギは、クレジットカードなどによる決済に比べ格段に落ちる取引の処理速度を上げることだ。利用が増えるのに伴い、システムをどういうやり方で「拡張」するかを巡って専門家の間で活発に議論が続いている。

第39回
ビットコインなどの仮想通貨が暴騰しているが、「値上がり期待」だけの購入は暴落の危険もあり、健全な姿ではない。送金手段などで利用が広がる中で、ビットコインを使って新しいビジネスをどう生み出していくか、そんな発想が重要だ。

過剰労働是正などの「働き方改革」の実効をあげるには、、規制一辺倒ではなく「経済原理」を活用することだ。残業に対する賃金の「割増率」を柔軟に設定したり、会社の外でもやれる仕事をアウトソーシングしたりすれば、労使の合理的な計算にもとずいて労働時間も適正化される。

労働市場の流動化は、企業が非正規化で辞めさせやすくするのでなく、中途採用を増やせるようにするのが目的だ。それには規制緩和で企業が成長する環境を作ることだ。雇用政策は産業政策であり、雇用を増やす産業政策で大事なのは規制緩和だ。

第36回
日本の賃金水準が下がっているのは産業構造の変化が根底にある。医療や福祉のように、パートに頼らざるを得ない生産性の低い産業のほうが成長率は高く、就業者のパート比率が高くなったからだ。全体の賃金上昇は、生産性の高い産業が成長することでしか実現しない。

第35回
働き方改革が目指す「同一労働同一賃金」はスローガン倒れだ。正規と非正規の賃金格差は仕事の内容に差があるからで、非正規雇用が増えたのは経済の構造変化が原因だ。形式的に行われれば正規社員の給与引き下げ圧力になる。

第34回
「働き方改革」で超過労働抑制が打ち出されたが、「過労死ライン」の長時間労働は減っていない。自宅に帰ってからも働く人が増えれば、仕事量は変わらずに「体のいい賃金カット」で終わる。労働生産性を上げないとそうなる。

第33回
個人が、フリーランサーとして働き、副業や兼業で、ウェブを通してさまざまな情報コンテンツを有料配布する社会がもうすぐ来る。ネックになっていたのが課金システムだが、仮想通貨(ビットコインが普及すれば簡単にできる。フリーランサーの可能性が広がる。

ビットコインの送金は、国内だけでなく海外送金でコストの安さなど、銀行よりさらに優位性を持つ。途上国との貿易拡大や安い労働力が活用できるなど、ビットコインによる送金システムを確立することは、日本の成長戦略としても重要だ。

第31回
メガバンクが独自に発行する仮想通貨が広く使われる日が近ずいている。5月から行員同士の送金などの実証実験を始めた三菱東京UJF銀行では、来春には一般向けに発行するという。他の銀行も仮想通貨を発行し、他行預金保有者への送金が安い手数料でできるようになれば、一気に普及する可能性がある。

第30回
ビットコイン(仮想通貨)による送金は、手数料の安さやいつでも瞬時に送れるなどで、銀行の送金システムより優れている。現実通貨に両替して送金するのも、手数料は銀行振り込みと同じか少し高い程度。送金の便利さでは、ビットコインはすでに銀行を乗り越えたといってもいい。

第29回
ビットコインを使えば、地球上のどこにでも瞬時に送金ができる。ロシアとの紛争が続くウクライナで、垂れ幕にビットコインのコードが書かれていたバリケードの写真を見て、世界中から支援の寄付が集まったこともある。送金や受け取りの「財布」は、スマートフォンやパソコンに簡単な手続きで作ることができる。

第28回目
仮想通貨が4月から正式な決済手段として使えるようになり、一部の量販店舗で試験導入が始まった。店にとっても決済手数料がカードより安く、ビットコイン決済が零細な中小商店でも急速に普及する可能性もある。だが利用者は習熟するまでは少額の保有にとどめ、使い慣れてから残高を増やしていくのがよさそうだ。

第27回
政府の「働き方改革」の実行計画がまとまったが、欠けているのは会社などに属さないフリーランサーのような働き方だ。情報通信技術の進歩で仮想通貨などが普及すればさまざまな働き方が可能になり、残業規制や就業規則に縛られないで働くこができ、人手不足のサービス部門などの低生産性も高まる。
