
2015.7.15
日銀が市場の信認を得るために残る課題
日本では、予想インフレ率の上昇が賃金や物価の意思決定に十分織り込まれていない。これは、日銀がコミュニケーションのあり方を磨く必要を示している。6月に決定した一連の施策は評価できる。残る課題は「適切な景気判断」だ。
野村証券金融経済研究所チーフエコノミスト
もりた・きょうへい/1994年九州大学卒業、野村総合研究所入社。英国野村総研ヨーロッパ、野村證券金融経済研究所を経て、バークレイズ証券(2008~2017年)およびクレディ・アグリコル証券(2017~2022年)にてチーフエコノミスト。2022年7月より現職。2000年米ブラウン大学より修士号(経済学)、2018年九州大学より博士号(経済学)を取得。共著に『人口減少時代の資産形成』(東洋経済新報社)、『現代金融論 新版』(有斐閣)など。
2015.7.15
日本では、予想インフレ率の上昇が賃金や物価の意思決定に十分織り込まれていない。これは、日銀がコミュニケーションのあり方を磨く必要を示している。6月に決定した一連の施策は評価できる。残る課題は「適切な景気判断」だ。
2015.6.17
5月決定会合における日銀の景気判断の上方修正、6月10日の為替に対する黒田総裁の発言などを勘案すると、今後日銀が「量的」な追加緩和を行う可能性は低いと見られる。その代わりに日銀が向かうのは、「質的」な追加緩和だと筆者は見ている。
2015.6.10
2015年の日本の金融市場にとって最大のリスクは、中国株リスクかもしれない。上海総合指数は5000ポイントを超えて、対前年比2.5倍の水準だ。今後、投機マネーの暴走、バブル崩壊、中国経済減速ともなれば、日本経済が被るリスクは計り知れない。
2015.5.20
今週1~3月期のGDP統計が発表される。筆者の見立てでは個人消費の足取りの重さが示されるだろうが、その背景には労働市場の改善スピードが思ったほど高まっていないことがある。労働市場は回復しているという世間の認識の裏にどんな誤解があるのか…
2015.5.13
毎年6月に「日本再興戦略」が更新され、安倍政権の成長戦略が描き直される。ただ、当初抱いていた期待感の大きさと比べると、かなり色褪せてしまった感は否めない。改革を加速する突破口である「国家戦略特区」の運用状況について振り返りたい。
2015.4.15
アベノミクスの象徴とも言える「量的・質的金融緩和」が始まって2年が経過した。このタイミングを捉えて、アベノミクスについて、まだ成果が出ていないところ、大きな成果が見られたところ、これからの課題、という点から中間評価してみよう。
2015.3.18
気回復下での物価停滞が続く「逆スタグフレーション」に向かう中、日銀の課題は、企業や家計のインフレ期待を見極めることだ。安定的な「CPI前年比2%」を実現するに、当面は天然ガス価格、中長期的には労働市場改革という2つの焦点が重要となる。
2015.2.18
安倍内閣が日銀審議委員の候補として掲示したリフレ派の原田泰・早大教授の姿勢が、変化してきた。このこともあり、日銀のコミュニケーションがさらにわかりにくくなるリスクもある。「CPI前年比+2%」という目標をどう見るか。
2015.1.14
日銀が量的・質的金融緩和を始めて、間もなく2年が経つなか、原油価格の下落には歯止めがかからない。日銀の物価見通しについては、前提となる原油価格や為替の水準は公表されていない。2014、15年度のコアCPI見通しの下方修正は必至と見られるが、…
2015.1.7
2015年の景気は出だしがよい。日本経済の好発進を示す、非常に強い経済データがいくつも発表されている。問題は、その出足がさらに先行きの持続的拡大にスイッチできるかどうかである。新年1回目は、筆者なりに好材料と不安材料を考察してみよう。
2014.12.24
原油価格は12月、WTIで50ドル台の水準まで低下した。今後、日本経済にとってその影響はどう出るのか。実は1980年代にも、今のような「逆オイルショック」の状況があった。当時の状況を踏まえ、2015年に訪れる「トリプルメリット」の予想しよう。
2014.12.10
総選挙が14日に迫っている。このタイミングを捉えて、安倍政権がアベノミクスを通じて成し遂げたことと、道半ばのことを峻別しておく価値はあろう。アベノミクスの「トリクルダウン」はなぜ利きにくいのか。その背景を徹底検証しよう。
2014.12.3
今回の衆議院選挙が日本経済の行方を左右する重要なイベントであることは、重々承知だ。だが、今ひとつ盛り上がりに欠けると感じる。消費税増税を先送りして、一体何を目指すのかがぼんやりしているからだ。私たちは何を各政党に求めるべきか。
2014.11.26
7~9月期のGDPは市場の予想を大きく下回った。日本は、景気後退局面とも見られかねない状況にある。ただし、足元は2012年のような世界中真っ暗の景気後退局面とは異なる。筆者は2015年度に向け、景気回復への「トリプルメリット」が訪れると見る。
2014.11.12
10月末、日銀は追加緩和に打って出た。これは多くの市場参加者にとってサプライズだった。黒田総裁の説明は、それまでの日銀の説明と著しく一貫性を欠いていたからだ。それは、10月上旬に行なわれた金融政策決定会合の議事要旨を見ると明らかだ。
2014.11.5
10月31日、日銀が意表を突いて追加緩和に打って出た。金融政策の主要な武器が、為替への影響力に移っていることは明らかだ。日銀はこれからも、物価上昇率2%を目指して、円安圧力を働かせる追加緩和を発動し続けるのだろうか。
2014.10.29
足もとの為替相場は、一時は110円台と6年ぶりの円安水準になった。筆者が為替について長らく持っていたストーリーラインは、「達磨さんが転んだ」というものだ。ゲームのルールを決める「鬼」としての主導権は、いつも米国サイドにあった。
2014.10.15
最近、黒田日銀総裁の発言などを観察すると、「CPI前年比2%」という物価安定目標の達成時期の目処としてきた「2年」という時間軸が、柔軟化していることを感じる。日銀は追加緩和よりも、フォワードガイダンスの再設計に動くのか。
2014.10.8
足もとで進む円安に対して、企業経営者などから批判的な意見が数多く述べられるようになった。筆者は、マクロ経済が正常化していく過程で円安のモメンタムが止まってしまうことは、マイナスだと思う。改めて円安のメリット・デメリットを考えよう。
2014.10.1
景気は本当にいいのか、それとも悪いのか――。足もとの景気局面は、アベノミクスが始まった2012年末以来の景気循環のなかで、初めて不安が生じた局面でもある。現状は、2013年以降、脱「失われた20年」とした転換の潮流にあると筆者は思う。
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