2015.3.18
安定的な「CPI前年比2%」を実現する焦点
気回復下での物価停滞が続く「逆スタグフレーション」に向かう中、日銀の課題は、企業や家計のインフレ期待を見極めることだ。安定的な「CPI前年比2%」を実現するに、当面は天然ガス価格、中長期的には労働市場改革という2つの焦点が重要となる。
野村証券金融経済研究所チーフエコノミスト
もりた・きょうへい/1994年九州大学卒業、野村総合研究所入社。英国野村総研ヨーロッパ、野村證券金融経済研究所を経て、バークレイズ証券(2008~2017年)およびクレディ・アグリコル証券(2017~2022年)にてチーフエコノミスト。2022年7月より現職。2000年米ブラウン大学より修士号(経済学)、2018年九州大学より博士号(経済学)を取得。共著に『人口減少時代の資産形成』(東洋経済新報社)、『現代金融論 新版』(有斐閣)など。
2015.3.18
気回復下での物価停滞が続く「逆スタグフレーション」に向かう中、日銀の課題は、企業や家計のインフレ期待を見極めることだ。安定的な「CPI前年比2%」を実現するに、当面は天然ガス価格、中長期的には労働市場改革という2つの焦点が重要となる。
2015.2.18
安倍内閣が日銀審議委員の候補として掲示したリフレ派の原田泰・早大教授の姿勢が、変化してきた。このこともあり、日銀のコミュニケーションがさらにわかりにくくなるリスクもある。「CPI前年比+2%」という目標をどう見るか。
2015.1.14
日銀が量的・質的金融緩和を始めて、間もなく2年が経つなか、原油価格の下落には歯止めがかからない。日銀の物価見通しについては、前提となる原油価格や為替の水準は公表されていない。2014、15年度のコアCPI見通しの下方修正は必至と見られるが、…
2015.1.7
2015年の景気は出だしがよい。日本経済の好発進を示す、非常に強い経済データがいくつも発表されている。問題は、その出足がさらに先行きの持続的拡大にスイッチできるかどうかである。新年1回目は、筆者なりに好材料と不安材料を考察してみよう。
2014.12.24
原油価格は12月、WTIで50ドル台の水準まで低下した。今後、日本経済にとってその影響はどう出るのか。実は1980年代にも、今のような「逆オイルショック」の状況があった。当時の状況を踏まえ、2015年に訪れる「トリプルメリット」の予想しよう。
2014.12.10
総選挙が14日に迫っている。このタイミングを捉えて、安倍政権がアベノミクスを通じて成し遂げたことと、道半ばのことを峻別しておく価値はあろう。アベノミクスの「トリクルダウン」はなぜ利きにくいのか。その背景を徹底検証しよう。
2014.12.3
今回の衆議院選挙が日本経済の行方を左右する重要なイベントであることは、重々承知だ。だが、今ひとつ盛り上がりに欠けると感じる。消費税増税を先送りして、一体何を目指すのかがぼんやりしているからだ。私たちは何を各政党に求めるべきか。
2014.11.26
7~9月期のGDPは市場の予想を大きく下回った。日本は、景気後退局面とも見られかねない状況にある。ただし、足元は2012年のような世界中真っ暗の景気後退局面とは異なる。筆者は2015年度に向け、景気回復への「トリプルメリット」が訪れると見る。
2014.11.12
10月末、日銀は追加緩和に打って出た。これは多くの市場参加者にとってサプライズだった。黒田総裁の説明は、それまでの日銀の説明と著しく一貫性を欠いていたからだ。それは、10月上旬に行なわれた金融政策決定会合の議事要旨を見ると明らかだ。
2014.11.5
10月31日、日銀が意表を突いて追加緩和に打って出た。金融政策の主要な武器が、為替への影響力に移っていることは明らかだ。日銀はこれからも、物価上昇率2%を目指して、円安圧力を働かせる追加緩和を発動し続けるのだろうか。
2014.10.29
足もとの為替相場は、一時は110円台と6年ぶりの円安水準になった。筆者が為替について長らく持っていたストーリーラインは、「達磨さんが転んだ」というものだ。ゲームのルールを決める「鬼」としての主導権は、いつも米国サイドにあった。
2014.10.15
最近、黒田日銀総裁の発言などを観察すると、「CPI前年比2%」という物価安定目標の達成時期の目処としてきた「2年」という時間軸が、柔軟化していることを感じる。日銀は追加緩和よりも、フォワードガイダンスの再設計に動くのか。
2014.10.8
足もとで進む円安に対して、企業経営者などから批判的な意見が数多く述べられるようになった。筆者は、マクロ経済が正常化していく過程で円安のモメンタムが止まってしまうことは、マイナスだと思う。改めて円安のメリット・デメリットを考えよう。
2014.10.1
景気は本当にいいのか、それとも悪いのか――。足もとの景気局面は、アベノミクスが始まった2012年末以来の景気循環のなかで、初めて不安が生じた局面でもある。現状は、2013年以降、脱「失われた20年」とした転換の潮流にあると筆者は思う。
2014.9.17
日銀には、「物価の安定」を通じて「国民経済の健全な発展に資する」という2重の理念がある。だが、日本経済に潜在成長率の低さという実質概念上の問題が存在するなか、名目の理念である物価安定目標を達成することに、整合性はあるだろうか。
2014.9.10
値上げラッシュのなか、肝心要の賃金上昇は6月になってようやく上昇開始が確認されるようになった。ただし、勤労者が極めて多い事業所規模5~29人の中小企業では、賃金上昇率がわずかに止まる。その背景には、社会保険料負担の「影」が見える。
2014.9.3
8月半ばに各国の長期金利は、各地で節目となる水準を割った。日本では国債が低金利で買えないと言われながらも思いのほか金利が低下したが、欧州の状況はこれと類似する。国債を「コメ」とすれば、日本から見て欧州はまだ主食代替に見えやすい。
2014.8.20
米国カンザスシティ連銀は、ジャクソンホールでの年次経済シンポジウムの総合テーマを、「労働市場の力学の再評価」と発表した。現在の景気動向を見るにつけ、もし日本にもジャクソンホールがあったら、テーマはやはり労働市場の力学となりそうだ。
2014.8.6
消費税率が上がって4ヵ月が過ぎ、増税のダメージは想定の範囲内に見える一方、明確に景気が浮揚したという実感は乏しい。このような経済環境では、消費税反対論が再び勢いを増す可能性があるが、筆者は財政再建のために増税は不可欠だと考える。
2014.7.30
今日、金融危機が収拾に向かい、市場変動が低下し、再び2000年代半ばの「グレートモデレーション」に戻りつつあるのでは、との見方が台頭している。果たして、それは本当だろうか。筆者は、金融の長期安定に伴う慢心には常に留意が必要だと思う。
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