
森田京平
2019年の市場を展望すれば、4月以降、統一地方選や参院選のある日本と欧州議会選挙や各国選挙がめじろ押しの欧州の「政治」が焦点になる。為替市場が影響を受け、円高に振れる可能性がある。

さまざまな消費増税対策が検討されているのは、急速な高齢化のもと、高齢者ほど消費税を強く意識し、また国政選挙の議席配分が高齢者の多い都道府県に手厚く配分されていて政治がそのことを意識しているからだ。

2日発足した第4次安倍内閣は「改憲」を最重要課題としているが、改憲の国会発議や国民投票で合意が得られるハードルは低くはない。2019年の参院選などの結果次第では政権の求心力が低下し政治が不安定する可能性が高い。

日本銀行が打ち出した政策金利の「フォワードガイダンス」は将来の予測なのか、約束なのか。黒田総裁の発言からは金融緩和維持を比較的、強くコミットしたものと受け取れる。したがって金利上昇の余地は限られる。

今週は日米欧の中央銀行の政策決定会合がそろって開催される「BigWeek」だ。着実に利上げを進める米国や量的緩和策の「段階的終了」に向けて動き出す欧州と、日銀との落差が浮き彫りになるだろう。

異次元緩和からいつ抜け出すかということが議論されてきた「出口論」はいまや安倍政権がいつ終わるのか、に姿を変えた。“シグナル”は首相に対する支持率である「首相プレミアム」だ。

日銀新体制の一つの注目点は、副総裁に引き続きリフレ派が起用されることだ。いまの金融緩和の長期化が予想され、金融緩和と物価上昇の因果関係がはっきりしない中でリフレ派新副総裁の真価が問われる。

異例の異次元緩和にもかかわらず「デフレ脱却」が遠い中で、欧米と同じ「2%物価目標」の意味合いが改めて問われている。日本は欧米と違って経済が「価格」で調整されやすい。経済の構造が違う中で政策効果も違うはずだ。

衆院選で自民党が大勝し、連立与党の議席が衆院定数の3分の2を超えたことで、憲法改正の国会発議や「安倍3選」の道筋が見えたと言われるが、現実は逆だ。無党派層の支持の多さという安倍政権の特徴を踏まえると、2018年は「政治は一寸先は闇」という時間帯が続く。

バブル期に匹敵する完全雇用状態だというのに賃金が伸びないのはなぜか。アベノミクスのもとでの雇用の増加は、サービス業などの労働集約的な産業が中心で、労働生産性の伸びが伴わないものだからだ。働き方が多様化する中で、以前は連動した雇用と賃金の関係も変わりつつある。

物価上昇の足取りが鈍い米国だが、求人があっても職能とあわなかったり、フルタイムの求人がみつからずパートでの就業を余儀なくされたりしている人たちの雇用状況は改善され、賃金が今後、上振れする余地がある。FRBの出口戦略が頓挫するとは当面、考えにくい。

日本銀行が大規模な金融緩和をずっと続けても、消費者物価上昇率(CPI)の 「物価目標」を達成できないのは、「想定外」の賃金の低迷がある。その背景には、労働需給と賃金の関係を希薄化させる「3つのシフト」が、労働市場で2012年から始まったからだ。

第222回
日本では第2次安倍政権が始まって間もなく4年が経つ。今こそアベノミクスの「総括的な検証」がなされる時期である。マクロ経済の視点からアベノミクスを検証してみたい。

第219回
1月に「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」(NIRP)を導入したわずか8ヵ月後の9月21日、日銀は「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」(QQEYCC)に移行した。なぜ、NIRPから離脱したのだろうか。

第205回
アベノミクスは成果を厳しく問われる重要な節目に入る。しかし政府・日銀の意図に反し、物価、賃金は思うように上昇しない。失業率と賃金増加率の関係を示すフィリップス曲線の切片が低下しているのだ。その背景には人口動態がある。

第202回
3月1日に発表された10~12月期の法人企業統計の結果を見ると、景気の厳しさが増している姿が浮かび上がる。景気回復の持続性を左右する売上高はこの20年伸びておらず、アベノミクスが強調してきた利益も鈍化し始めた。

第199回
グローバル・リスクオフ下では、マイナス金利で円高の動きを反転させることは難しい。またアベノミクスには企業の「売上高」という観点が欠けているのが問題だ。10~12月期GDPの発表後、国内経済の鈍さが市場のテーマとなるであろう。

第196回
日銀が昨年行った2つの措置は、QQEが想定以上に長引くリスクと自らの財務の健全性も意識し始めたものといえる。だが、日銀の損失対応策ははっきりしていない。これはもはや単に「金融政策」ではなく「財政問題」「政治問題」である。

第193回
2016年以降を展望した時、日銀の金融政策については大きく見方を変える必要がある。追加緩和に当たって日銀は深刻な問題に直面し、また政府の姿勢も大きく影響するだろう。2016年は「札割れ」、2017年は早ければ「テイパリング」(量的緩和の縮小)が焦点になると考える。

第190回
日銀は10月30日の金融政策決定会合で、結局金融政策を据え置いた。日銀の市場や経済主体の「期待」に働きかける度合いが弱まってきている。金融政策をめぐる「ゲームのルール」がまさに今変わろうとしている。
