窪田順生
緊急事態宣言の延長について「根拠がない」という批判が強まっている。ただ、それでも今後も日本政府の「根拠なきコロナ対策」という方針は、さほど大きな変化がないのではないかと思っている。なぜそんな悲観的なことを言うのかというと、これが「国難」に直面した日本でよく起きる自滅パターンだからだ。

菅首相の長男による総務省幹部接待問題に対し、ここにきてテレビや新聞の追及が、なぜかトーンダウンしてきたように感じる。かつての「モリカケ問題」のときと比べて、報道姿勢がおとなしく感じるのはなぜか。背景には、マスコミ各社の深い苦悩が見え隠れする。

中国の消費者の嗜好を反映しやすいSNS「微博」でつぶやかれたブランド名の調査では、日本のブランドがランクを下げ、中国や韓国のブランドが台頭している。マーケティングが劣っていたことだけが理由ではない。中国で日本のブランド信仰が揺らいでいる真因とは。

批判の嵐に晒されていた五輪組織委の森喜朗前会長を擁護する声が、ここにきて増えている。綺麗事では進まない五輪の運営について、森氏の調整力が改めて見直されている側面もありそうだ。それにしても、森氏の「密室人事」まで擁護する声が出ているのはなぜなのか。

女性蔑視発言が批判の嵐に晒されている、東京五輪組織委の森喜朗会長。辞任を求める声も多いが、果たして森氏が辞めるだけで、政界に深く根を張る「長老支配」は解消されるのか。残念ながら、難しいと言わざるを得ない。根本的に議論すべきことは、他にあるのだ。

新型コロナのワクチン接種が急がれる中、日本では、すぐにでも接種した方がいいと思える立場の人たちが後回しにされ、それほど急いで接種する必要がないと思える人たちが「最優先」とされている。医療従事者へのワクチン接種の方針を取り上げ、この問題に迫る。

「五輪中止」の世論が高まっている。現実的な落としどころと言われるのが、無観客または規模縮小での開催だ。しかし、この案は不吉な予感がする。現在のコロナ禍を予言していたのではないかと話題になった漫画『AKIRA』の中に、気になるエピソードがあるからだ。

麻生財務相が、全ての国民に対して一律10万円の再給付を行うつもりはない、と発言したことで批判を浴びている。その一方、緊急事態宣言下で時短営業に応じた飲食店に対する一律6万円の給付にも批判が集まっている。なぜ、こんなことが起きているのか。

医療崩壊が叫ばれる中、政府が民間病院に協力を呼びかけている。冬のコロナの感染爆発は以前からわかりきっていたことだが、なぜこのタイミングなのか。感染ペースが落ち着いた猶予期間もありながら、これまで医療体制の見直しが進まなかった根本的な原因を考える。

再び発令される緊急事態宣言は、ただでさえ疲弊する医療機関にトドメを刺す恐れもある。政府はまだ手を尽くしたとは言い難く、日本は新型コロナの難局を「国民のがんばり」で乗り切ろうとしている。戦時中とオーバーラップするその行動様式のリスクを炙り出す。

コロナ第3波による医療崩壊が、いよいよ現実味を帯びてきた。それに伴い、新型コロナの指定感染症の2類相当措置の見直しを主張する声も増えてきた。しかし、それだけではこの問題は容易に解決しない。日本の医療にはもっと根本的な問題が横たわっているからだ。

ヨーロッパの有名なことわざに、「地獄への道は善意で舗装されている」というものがある。善意から行われたことがかえって事態を悪化させてしまい、悲惨な結果を招くという意味だ。「Go Toトラベル」をはじめ、日本の政策にはこういうものが多い。なぜだろうか。

内閣官房参与の高橋洋一氏が週刊誌のインタビューなどで唱えた「Eテレ売却論」が、マスコミから叩かれている。議論の本質が歪められてしまったかのような報道も少なくない。NHK改革の必要性が取り沙汰されている中で、なぜこうしたことが起きるのか。

先日公開されたナイキの新CMが、議論を呼んでいる。いじめや差別を受けているとおぼしき子どもたちの姿を描いた内容のため、「日本社会のイメージが悪くなってしまう」というのだ。しかしこのCMからは、ナイキのリスクをとった周到な戦略が見て取れる。

先日、政府の成長戦略会議の中で、日本商工会議所の三村明夫会頭の口から、耳を疑うようなダイナミックな「珍説」が飛び出した。その趣旨は、零細企業の衰退が地方衰退の背中を押しているというものだ。そこからは、日本の中小企業が抱える根深い課題が垣間見える。

近藤真彦さんの5年不倫が「文春砲」でスッパ抜かれたが、各局のワイドショーは揃いも揃ってスルー。その報道自粛ぶりは異様にさえ見える。ワイドショーがこぞってベッキーさんを叩いた、かつてのゲス不倫騒動と何が違うのか。背景にはメディアの深い病が見える。

米国大統領選で、いまだに負けを認めず抵抗を続けているトランプ大統領。一方、勝利宣言をしたバイデン氏も期待値だけが勝手に上がっており、足元は楽観できない。両者ドローの状況の中で、1人だけ明確に「惨めな敗者」がいる。それは他でもないマスコミだ。

タカラトミーやアツギなど、大企業っぽくないつぶやきで人気を博していた企業SNSの「中の人」が、相次いで大炎上している。なぜここにきて、「中の人」が次々と叩かれているのか。企業の炎上対策の専門家の目から、「中の人」たちが陥りがちな罠を分析する。

映画『鬼滅の刃』が歴代最速で興行収入100億円を突破した。これほどのヒットになったのは、「鬼退治」というシンプルなストーリーの中に、観た者が知らずに心を揺さぶられる要因が隠されているからだ。それは、日本人に根付く「悲しき人食い鬼」の記憶である。

脱ハンコに反対する者を「既得権益にしがみつく人」という構図で批判する、「ハンコ警察」ともいうべき人たちが増えている。しかし、ムダな印鑑を一掃しても、日本社会の効率は良くならない。日本のハンコ文化は、諸外国にはない根本的な問題を抱えているからだ。
