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安井明彦
バイデン政権が提唱するインド太平洋経済枠組み(IPEF)の交渉が本格化するが、議会を“迂回”し政府主導で進めるやり方に対中強硬姿勢では一致する議会の不満は強い。米国が指導力を発揮し成果を上げられるかは不透明だ。

米国では中間選挙で上下両院が「ねじれ議会」となり政策運営の停滞が予想されるのに対し、州政府は知事と議会の多数派が同一政党の州が増え次世代のリーダーが独自政策を競う動きが活発化しそうだ。

接戦となった米中間選挙では共和党はトランプ前大統領の負の側面が際立ち、民主党は求心力が低下するバイデン大統領に再出馬を思いとどまらせる機会を失った。両党ともに24年米大統領選への悩みが深まることになった。

米中間選挙は民主党が上下両院の過半数を維持するのか、前回大統領選のような投票集計の「不正」などをめぐる混乱が再び起きることはないのかで、バイデン政権の選挙後の政権運営の難易度は大きく違うことになる。

バイデン大統領が大統領権限で学生ローン返済免除を打ち出したのは、秋の議会中間選挙での支持獲得を狙った思惑がありそうだが、大統領権限“乱用”で米国の三権のバランスを崩すなどの懸念がある。

米国経済の課題となっているインフラ強化だが、許認可に時間がかかり過ぎることがネックになっている。「政府の機能不全」は徴税や医療の面でも起きておりバイデン政権の「大きな政府」路線のアキレス腱だ。

中絶権利廃棄判決など保守化が際立つ米最高裁だが、秋からの次の会期では次の大統領選を左右しかねない審理も予定されている。最高裁の判断が、党派対立や米社会の分断を一層深刻化させるリスクが強まる。

米国では、企業が人種差別や妊娠中絶などの社会的な争点に自らの姿勢を表明することが必須になり始めている。態度を鮮明にしないと雇用確保にも支障が出るからだが、党派対立に巻き込まれるリスクと背中合わせだ。

女性に妊娠中絶の権利を初めて認めた「ロー対ウェイド判決」を米最高裁がひるがえす見通しだ。二大政党間で長く論争になってきた問題だけに、議会中間選挙や2024年大統領選への影響も少なくない。

米議会中間選挙の候補者選びの予備選が始まったが、主役は大統領選再出馬を狙って推薦状を乱発するトランプ前大統領だ。中間選挙では議会多数派の行方だけでなく、トランプ自身の命運がかかる。

ウクライナ危機では対ロシアへの「弱腰」批判があるバイデン大統領だが、秋の中間選挙をにらんで求心力の回復につなげるためにも、欧州などとの同盟関係重視を掲げ期待された手堅い手腕の発揮どころだ。

コロナ感染拡大がピークを越えた米国で民主党の州知事がマスク着用義務を緩和する動きが広がる。徹底したコロナ対策を掲げるバイデン政権には中間選挙を前に軌道修正に追われている。

コロナ禍、学校閉鎖をめぐる保護者と教職員組合の対立が中間選挙を巡る思惑から政治問題化し始めた。共和党は、組合弱体化やバイデン政権への揺さぶりを図る。根本にある教員不足の解消は、後ろに追いやられている。

大統領選再出馬を狙うトランプ氏の陣営が、各州の州務長官選へ介入し、選管や投票所への関与を支持者に呼び掛けるなど、選挙運営自体に影響力を行使しようとしている。米国の民主主義を脅かしかねない問題だ。

来年の中間選挙を前に、共和党が優勢に立つ州でワクチン義務化阻止や区割り変更で攻勢を強めている。バイデン政権は、州を舞台にした共和党への対応という新たな難題を抱えた形だ。

来年の中間選挙を占うバージニア州知事選は民主党候補が予想外の苦戦だが、共和党側も複雑な事情を抱える。復活を狙うトランプ前大統領が候補者の応援で自らが主役のように振る舞っているからだ。

バイデン大統領の支持率低下は就任当初の期待の上振れがはげた面があるが、大統領の実務能力に対する信頼喪失にまでにならないのかなど来秋の中間選挙に向けて気になる兆候がある。

バイデン政権の目玉、インフラ投資法案が上院を通過したが、その陰には失業保険未使用分や将来の税収増を財源に入れ、「財政赤字ゼロ」に見せた予算ルール無視のカラクリがある。

米国のコロナ感染再拡大の背景には、共和党支持者がバイデン政権への不信からワクチン接種を忌避し接種が伸び悩んでいることがある。大統領選の分断はコロナ問題にまで影を落とす。

コロナ禍からの回復とともにバイデン政権の「大きな政府」への求心力に陰りが見える。代わりに対中強硬路線を前面に党内結束や共和党との調整を図る構えだが、「中国カード」は切り札になるのか。
