横田増生
ユニクロ、黎明期のアマゾンからトランプ信者の団体まで――。組織に潜入し実情を掘り起こしてきた「潜入記者・横田増生」がアマゾンの次に潜入取材を行ったのは、ヤマト運輸だった。宅急便の巨大仕分け拠点に潜り込み、配送するトラックに同乗して聞こえてきたのは、ネット通販の荷物が激増するのに対応しきれずに、悲鳴を上げている現場の声。崩壊しかかっていた宅配業界の労働問題の闇とは…。

ユニクロ、ヤマト運輸、佐川急便からトランプ信者の団体まで――。組織に潜入し実情を掘り起こしてきた「潜入記者・横田増生」が生まれたきっかけは、黎明期のアマゾンの物流センター(千葉県・市川塩浜)で時給900円で働くことだった。手本にしたのは、ルポライターの鎌田彗が1970年代、トヨタ自動車の期間工として働いた体験を基に書いた『自動車絶望工場』。高度成長期に書かれたトヨタの生産現場と、ネットバブルに踊った2000年代のIT企業の労働環境を比較して分かったこととは?

Qアノンとは、小児性愛者と闘うという極右の陰謀論集団のことだ。FBIは、「Qアノンが国内テロの脅威になり得る」ととらえている。しかし、飛行機で隣り合わせたQアノン信者は、拍子抜けするほどアメリカのどこにでもいるような中流家庭の主婦だった。なぜアメリカ人は陰謀論にはまりやすいのか。

私は戸別訪問を再開した初日、再びトランプの赤い帽子を被り、選挙用アプリが入ったスマートフォンを片手に歩き始めた。1人で歩き回っていたボランティア活動に、助っ人が現れたのは6月下旬のこと。一緒に戸別訪問をやろう、と言ってくれたのは、中国系アメリカ人のグレース・ノリス(55)だった。共和党を支持するアジア人は珍しいな、と思いながら、彼女の話に耳を傾けていた。

黒人のジョージ・フロイドが白人警官に殺された事件に始まった「Black Lives Matter」運動。全米の複数の都市で抗議活動と暴動が起きる中、潜入ジャーナリストがミネソタ州ミネアポリスの抗議デモ現場に急行すると、驚きの光景が繰り広げられていた。

共和党は、白人中心の党だ。トランプが16年の大統領選挙で得た票のうち、88%までが白人票で占められている。ヒスパニック系は6%、アジア系が含まれるその他は4%で、黒人票は1%にも届かない。2018年時点で、アメリカの全人口に占める白人の割合は60.5%で黒人は12.5%であるのと比べると、トランプ支持者の中核が白人であることが分かる。

日本では、政治の場で人工妊娠中絶の是非が議論されることはないが、アメリカでは大きな政治課題の1つだ。トランプは就任以来、自らを中絶反対に最も熱心な大統領だ、として支持者に売り込んできた。

2020年のアメリカ大統領選で勝利し、第46代大統領に就任したジョー・バイデンの「人となり」とは?子ども時代は吃音に苦しみ、交通事故で妻子を亡くした過去があった。

ユニクロ、アマゾンの潜入ジャーナリストが単身渡米。トランプ陣営の選挙スタッフとなり戸別訪問1000軒超。アメリカの「分断」「狂信」「暴動」を全て内側から見た。一見すると堅牢にも見える民主主義は、私たちが信じているほど盤石ではなく、意外な脆弱性をはらんでいる。アメリカで起こった“トランプ現象”を追いかけながら、民主主義が、どのように道を踏み外し、どのように機能不全に陥り、崩壊の危機に直面するのかを考えていこう。

「プーチンさんもQですよ」などと支離滅裂な発言をする反ワクチン団体「神真都Q」の行動様式は、陰謀論にスピリチュアルな要素を自由自在に組み合わせることで、教会や寺院などにこだわらない“拡散宗教”の色彩をまとっている。オウム真理教の幹部だった上祐史浩は、自身のTwitterで神真都Qについて「1988年末のオウムと似ているように思う」と投稿している。

コロナ陰謀論と反ワクチンを唱える団体、「神真都Q」メンバーの逮捕は、カルトや新興宗教団体を扱う警視庁公安部公安総務課が指揮を執った。一方、神真都Q は警察を“爬虫類型宇宙人”とみなし、「ゴムマスクで人間に化けているので、松脂で退治できる」と奇想天外なことを言う。彼らのもう一つの特徴は、自らの正当性をアメリカ発祥の陰謀論集団「Qアノン」に求め、トランプ前大統領を信奉していることだ。

ユニクロやアマゾン、ヤマト運輸に潜入したジャーナリストが、コロナ陰謀論を唱える反ワクチン団体「神真都(やまと)Q」に突撃取材を敢行!一般人には理解不能な主張をする彼らの正体とは?

アマゾンは組合活動や税金徴収を、経営を妨害する“不当な行為”ととらえている節がある。法人税や米国内の売上税を支払わないように死力を尽くすアマゾン。それはベゾスが創業前から温めてきた企業成長の“秘策”だった。しかし、その姿勢はアメリカや日本などの各国政府と摩擦を起こしてきた。

アマゾンの利益の大部分をたたき出す、法人向けのクラウドサービス、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)事業。日本でも数多くの企業が導入している。知らない間に、新聞の見出しばかりか、記事までもAWSを使ったAIが書き、ラジオのニュースまで読み上げる。

アマゾンのマーケットプレイスでは、グレーな裏技を使って自らの商売を有利に進めようとする出品者と、対価を得てそれに加担するレビューアーたちがいる。フェイクレビューやステマレビューの仕組みを徹底取材すると、中国の業者と「情報弱者」の親密な関係が見えた。

ドイツのネットメディアの最大手が2018年4月に行った公開討論で、アマゾン創業者ジェフ・ベゾスは、過去5年以上にわたりストライキがつづくドイツの物流センターの労働問題と組合運動の必要性について問われると、「アマゾンはドイツで、約1万6000人を雇用しており、彼らに支払っている給与も業界水準からすると高いと認識しています。アマゾンは労働者と非常にいい形でコミュニケーションがとれているので、組合がわれわれと労働者の仲介役となる必要はないと考えています」と胸を張って答えている。果たして、このベゾスの発言はどこまで真実なのだろうか。

日本での潜入取材を終えた後、イギリスとフランス、ドイツの3カ国を回り、アマゾンに対峙するヨーロッパについて尋ねて回った。私と同じくアマゾンの物流センターに潜入したジャーナリストや、賃金アップのためストを打ちつづける労働者たちに出会い、日本とは異なる驚きの実態を目の当たりにした。

アマゾン創業者のジェフ・ベゾスは「自分たちでラストワンマイルのネットワークを作るつもりか?」と尋ねられ、はっきり「ノー」と答えている。アマゾンが進めたのは、中小の宅配業者をつなぎ合わせ、1つのネットワークを作るという手法だ。ヤマトが撤退した部分の穴を埋めようという戦略である。私は、中小の宅配業者のトラックにもドライバー見習いを装って横乗りした。

ヤマトのドライバーを密着取材すると、日本郵便や佐川急便のドライバーとも情報交換をするほど、仲がいいことがわかった。他方、この3社はアマゾンと「駆け引き」し、荷受け競争をしてきた。だがそれは、アマゾンに「振り回されていた」に過ぎない。

ヤマト運輸による多額の未払いサービス残業代が発覚した2017年以降、アマゾンは配送戦略を変えざるを得なくなった。私はヤマトのドライバーの助手席に乗り、潜入取材を敢行した。
