大崎真澄
上場SaaS企業の株価の下落と、それに伴う未上場企業のバリュエーション水準の低下─。2022年は国内のSaaS企業にとっても大きな変化の年になった。一部ではSaaSの時代は終わったという声も挙がったが、果たして実態はどうなっているのか。UB Venturesで代表取締役マネージング・パートナーを務める岩澤脩氏とチーフアナリストの早船明夫氏と共に2022年の日本のSaaS市場の状況やトレンドを振り返っていく。

店舗にかかってくる営業や問い合わせの電話。この対応を自動化することで、業務効率化や顧客の満足度向上につなげる“電話DX”サービスの「IVRy(アイブリー)」が利用企業を拡大している。

“紙”の作業が主流となっていたノンデスクワーカーの現場が、“現場向けにデザインされたサービス”の広がりによって変わり始めている。2016年創業のカミナシは、現場向けのDXサービスを展開するスタートアップ。累計で約300社へサービスを展開してきた同社が新たに約30億円の資金調達を実施した。

AIを活用して英語学習に変革を起こそうとしているSpeakeasy Labs。同社が韓国で展開してきた「Speak(スピーク)」はアクティブな有料会員を10万人以上抱える人気アプリに成長しており、年間収益は数千万ドル(数十億円)規模に上る。2022年11月にはOpenAI Startup Fundなどから2700万ドルを調達し、2023年2月からは日本版の展開も始めた。日本代表を務めるYan Kindyushenko (キンジュシェンコ・ヤン)氏にサービスの特徴や現状、そして今後の日本展開について話を聞いた。

日本の投資家や大手企業が「アフリカのスタートアップ市場」に注目し始めている。2022年におけるアフリカのスタートアップの資金調達額は約6500億円(約50億ドル)。欧米を筆頭にスタートアップの調達総額が減少する中で、アフリカは前年と同水準を維持。今後も人口が増加することからさらなる成長への期待も大きく、グローバルの投資家も目を光らせている状況だ。

今後深刻な人手不足が懸念される“ラストマイル輸送”の課題解決に向けて、自動配送ロボットの開発に取り組むスタートアップ・LOMBY(ロンビー)。同社は公道走行向けの屋外配送ロボットの量産を見据え、3月16日にスズキと共同開発契約を締結したことを明かした。

日本の大学に眠る“ディープテックの種”となる基礎技術を、適切な形で事業化するための支援をする──。2017年に東京大学を母体として始まった起業支援プログラム「1stRound」が、大学の輪を広げながら拡大している。2023年3月15日から新たに九州大学、慶應義塾大学、立命館大学、立命館アジア太平洋大学、早稲田大学が参画。“国内13大学”が共催する起業支援プログラムへと進化した。

スタートアップにおける資金調達手段の幅が広がってきている。小売企業向けのECプラットフォーム「Stailer(ステイラー)」を提供する10Xは、複数の金融機関から借入などを通じて新たに15億円を調達した。エクイティファイナンスや銀行借入に加えて、スタートアップ向けに設計されたベンチャーデットやフィンテック企業が展開する新しい切り口の資金調達サービスなど、選択肢が増えてきている。

海外で700万人以上が登録する社会人向けの匿名SNS「Blind」。直近ではレイオフ関連の情報が共有される場所としても盛り上がっている同サービスの“日本版”といえるSNSが本格始動した。

慢性的な人手不足や原材料の高騰により建設部材の調達難易度が上がっている。そんな状況で事業者から注目を集めるのが、建設部材の調達サービスを展開するスタートアップ・BALLASだ。BALLASは内製のシステムを用いて製作図の作成を効率化し、最適な工場に部材の製作を委託することで取引にかかる期間を短縮する仕組みを開発。創業から約1年で金属部材を中心に1500件以上の部材を供給してきた。

100種類以上のおやつの中から、自分用にパーソナライズされた商品が毎月届く“おやつのサブスク”「snaq.me(スナックミー)」。30〜40代の女性を中心に利用者を広げ、2022年には累計会員数15万人を突破。今ではサブスクの枠を越えた事業展開をしている。

靴のインソールからマスク、リカバリーウェア、マットレスまで──。ウェルネス領域に特化したD2Cブランド「TENTIAL」を運営するTENTIALでは、約3年半で合計50以上の“健康”にまつわる製品を販売してきた。中でも主力商品へと成長しているのが、リカバリーウェアの「BAKUNE」シリーズ。2021年2月の販売開始から約2年で15万枚以上を売り上げた。

不動産市場における課題をテクノロジーを用いて解決する「不動産テック(Prop Tech)」。日本でもこの分野の事業者が増えてきているが、未解決の課題も多い。2021年創業のFacilo(ファシロ)が取り組んでいるのは「仲介会社の担当者と顧客の間で発生するコミュニケーションをなめらかにすること」だ。

面接や商談、打ち合わせなど社外との日程調整の負担を減らす“日程調整ツール”が日本でも広がり始めている。グローバルでは2021年に米Calendlyが約3000億円(30億ドル)の評価額で大型の資金調達を実施したと報じられた。日本国内でもこの数年で複数社が新たに参入している状況だ。

日本でも大手出版社や複数のIT企業が参入し始めているウェブトゥーン市場。そんなウェブトゥーンの原作として注目を集めているのが「ウェブ小説」だ。

身近にあるさまざまなモノがインターネットにつながることを指す「IoT」。この“IoT化するモノの数”が着実に増え、IoTシフトが加速しつつある。2019年創業で、2月15日にベンチャーキャピタルなどから2.3億円の資金調達を発表したCollaboGate JapanはIoT関連の事業を展開するスタートアップだが、同社が開発しているのはIoTデバイスそのものではなく「メーカーが抱えるIoT特有のセキュリティ課題を解決するテクノロジー」だ。

2021年創業のゼロボードは温室効果ガス排出量の算定や削減を支援するサービス「zeroboard」を軸に、顧客企業の脱炭素経営を後押しするかたちで事業を急速に広げてきた。2022年1月に正式版の提供を開始した同サービスの導入社数は2200社を超える。

テクノロジーと専門家の知見を掛け合わせて話す力の定量化に挑んでいるカエカ。同社では約30分間の口頭試験を通じてユーザーの話す力を診断する「kaeka score」の一般販売を始めた。

さまざまなウェブシステム上に入力ガイドを設置し、システムの利活用やデータ入力を後押しできるナビゲーションツール「テックタッチ」。同サービスを開発するテックタッチがさらなる事業拡大に向けて17.8億円の資金調達を実施した。

テクノロジーの活用によって“薬局”体験の変革に取り組むヘルスケアスタートアップのカケハシ。同社が新たにシリーズCラウンドで約76億円の資金調達を実施した。
