『利己的な遺伝子』のリチャード・ドーキンス、
『時間は存在しない』のカルロ・ロヴェッリ、
『ワープする宇宙』のリサ・ランドール、
『EQ』のダニエル・ゴールマン、
『<インターネット>の次に来るもの』のケヴィン・ケリー、
『ブロックチェーン・レボリューション』のドン・タプスコット、
ノーベル経済学賞受賞のダニエル・カーネマン、リチャード・セイラー……。

そんな錚々たる研究者・思想家が、読むだけで頭がよくなるような本を書いてくれたら、どんなにいいか。

新刊『天才科学者はこう考える 読むだけで頭がよくなる151の視点』は、まさにそんな夢のような本だ。一流の研究者・思想家しか入会が許されないオンラインサロン「エッジ」の会員151人が「認知能力が上がる科学的概念」というテーマで執筆したエッセイを一冊に詰め込んだ。進化論、素粒子物理学、情報科学、心理学、行動経済学といったあらゆる分野の英知がつまった最高の知的興奮の書に仕上がっている。本書の刊行を記念して、一部を特別に無料で公開する。

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著者 アダム・オルター
─無意識下の情報処理 心理学者、ニューヨーク大学スターン・スクール・オブ・ビジネス、マーケティング准教授、心理学部で教鞭を執る

 人間の脳はとてつもなく複雑なものである。日常的なごく普通の活動をしているときでも、脳内では、多数の情報処理が並行して行われているが、そのほとんどは意識にのぼらない。この無意識下で処理されている情報は、私たちの思考や感情、行動に微妙な影響を与える。またそれが積み重なり、結果的に人生に大きな影響を与えることもある

 ここでは、それがよくわかる例を3つほど紹介する。私がこれからペンギン・プレスから刊行する予定の著書にはもっと多くの例を挙げている。

無意識下で処理されている情報1 色
赤い服を着た男女は異性に魅力的に映る

 色は私たちの周囲のどこにも存在している。しかし、特別に鮮やかな場合や、大きく自分の予測と違う場合を除き、私が色の存在を意識することはほとんどない。しかし、人間は見た色にさまざまな影響を受ける。

 ロチェスター大学の心理学者、アンドリュー・エリオットとダニエラ・ニエスタの近年の研究では、男性は赤いシャツを着ると、ほかの色のシャツを着たときに比べ、女性にとって少し魅力的に見えることがわかった。

 同じような効果は女性にも認められる。女性の場合は写真を赤で縁取ると男性にとってより魅力的に見える。赤は恋愛に積極的であること、同種のほかの個体よりも優位にいることを示す色だ。男性でも女性でもこの点は同じだ。

 ダラム大学の進化人類学者、ラッセル・ヒル、ロバート・バートンの研究では、多数のスポーツで、赤い服を着た競技者が、ほかの色を着た競技者よりも良いパフォーマンスを見せる傾向にあるのがわかっている。「自分は強い」というイメージを相手に知らせる力が赤という色にあるとすれば、そうなるのもうなずける。

 しかし、赤が常に良いとは限らない。赤は誤りを知らせるときや、警告するときに使われるケースが多いため、赤を見ると人は緊張しやすい。緊張によって創造性が下がることもある(サイエンス誌2009年2月27日号の記事「青それとも赤? 認知作業のパフォーマンスに与える色の影響を探る(Blue or red? Exploring the Effect of Color on Cognitive Task Performances)」(ラヴィ・メフタ、ルイ・ズー共著)などを参照)。

 こうした研究結果は、生物学、人間心理学に照らして正しいと思われる。だが、知って驚く人は多いだろう。