自身のランニング体験について綴った『走り方で脳が変わる!』を出版した茂木健一郎さんと、感情認識ロボットPepperの元開発リーダーで、現在はGROOVE Xという会社を立ち上げて新たなロボットを作っている林要さんの対談。最終回は、『走り方で脳が変わる!』で紹介されている、脳が何も考えていないときに働く回路「デフォルト・モード・ネットワーク」などの話から、無意識を鍛えるにはどうすればいいかという話題へ。そして、いまだ謎に包まれている、林さんが現在開発しているロボットの実態に、茂木さんが迫る。(構成:崎谷実穂、写真:榊智朗)
頭の中のイメージで、自分の体は決まる
茂木 林さんはランニングする人ですか?
林 『走り方で脳が変わる』を読んでから、走ろうと思ってはいるんですけど時間がなくて……。トヨタに勤めていた時は、社内でも走っている人がたくさんいました。この本にあるように、走っている人のほうがクリエイティビティを発揮しているかどうかはよくわかりませんでしたが(笑)。ただ、村上春樹さんがランニングをされるというのは、とても納得しました。
茂木 どういうところからですか?
林 脳を使った時は、体も動かさないとバランスがとれなくて、夜眠れないんですよね。本にもあるように体を動かすことで頭の疲れというか、ストレスが軽減される感じがあるんです。Pepperの開発責任者だった時はプレッシャーがすごかったので、頻繁に筋力トレーニングをしていました。あと、茂木さんが40歳になったのをきっかけに、つくばマラソンに挑戦されたというのはすごく共感します。私も43歳になって、そろそろ運動を定期的にやらないとまずいなと思ってるんです。
茂木 40歳になったときに、グライダーが滑空するみたいに、ここからはもう体力が落ちるばかりだと思ったんですよ。だから、その落ちる角度を少しでも緩やかにしないと、と思ってフルマラソンに挑戦したんです。あと、最近体を友人が体を鍛え始めたらしいのですが、そのきっかけがおもしろくて(笑)。服を脱いで鏡を見たら、自分の体がおじいちゃんみたいだったんだそうです。
林 わあ、それはつらい(笑)。『走り方で脳が変わる!』にもありましたが、脳内に自分の体のモデルってありますよね。それに合わせて、動きの俊敏さなどが決まってくる。自分の頭の中のモデルに、外側を合わせようとするから、自分の体のイメージが「おじいちゃん」になってしまったら、そのままずるずる衰えてしまいそう。
茂木 嫌ですよね、自分のイメージと違う体になっていたら。だから、年をとっても運動は絶対した方がいい。