2年前に開かれた医薬品通信販売の規制省令を見直す検討会。三木谷・楽天社長(下)などが参加した

 インターネットなどによる一般用医薬品(OTC)の郵便等販売(以下、通信販売)規制。その緩和に関する議論が今、ようやく動き出そうとしている。

 OTCの通信販売規制は、今から2年前の2009年に施行された、改正薬事法の施行規則等を定める厚生労働省の省令に起因する。ここで、3分類されたOTCの約7割を占める、相対的にリスクの高い第1類、第2類医薬品に規制が敷かれた。

 “対面の原則”による安全性が担保できない、というのがその理由だ。通信販売でも取り扱いが多い第2類までもが規制されたことに、業者側は猛反対。厚労省は異例の省令再検討を試みたが、 “離島居住者と継続使用者に対してのみ、第2類まで認める”という2年間の経過措置を出し、半強制的に議論の場を閉めた。

 厚労省はかつて、規制緩和には「バーチャルな薬局の許可体制をつくる必要がある」と語っていた。しかしこの2年間、同省主体の検討会などは開かれていない。

 経過措置期間は今年5月末で終了する予定だが、そうなると第2類の通信販売は全面禁止となる。厚労省は昨年末に実態調査を行い、「(OTCの通信販売には)一定の需要がある。経過措置期間の延長については前向きに考えたい」と表明するに至った。離島の薬局などは不足したままなのだ。

 リスク分類の見直しも、伝統薬に多い生薬製剤から順次始めている。第3類に変更されれば、通信販売が即刻可能になるとあり、関係者は固唾をのんで結果を見守る。

 ただし、「見直しの必要性は以前から述べられていたのに、取りかかるのが遅過ぎた」(ドラッグストア関係者)ことで、混乱も起きている。「伝統薬だけを第3類に変えるのではないか」。2月1日に行われたeビジネス推進連合会のカンファレンスで、三木谷浩史・楽天会長兼社長はこの趣旨の懸念を述べた。事実、経過措置期間終了までにすべての見直しが終わる可能性は低いようだ。

 対する伝統薬も、「一部が第3類に変えられるだけで、その他の伝統薬の規制緩和はうやむやにされるのではないか」と不安視する。

 OTCの通信販売市場は155億~200億円といわれ、市場全体の1~2%にすぎない。しかし、急速に進む高齢化などで、通信販売への需要は今後高まるだろう。また、売れ筋以外の商品も品揃えできるなど、リアルの店舗を持たない通信販売だからこそ担える役割もある。

 当規制は、3月に行われる行政刷新会議の“規制仕分け”でも取り上げられる見込みが高いという。事業者の営業の自由確保もさることながら、市場のニーズからいっても通信販売の安全性の検証、ルール整備の議論は避けて通れない。今度こそ徹底的に話し合いを行う必要がある。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子)

週刊ダイヤモンド