電気料金の「見える化」が促す
自発的な節電効果
③電力価格は見えにくい
行動経済学の研究では、人は「見える価格」には反応するのに、「見えにくい価格」には反応しないことが知られています。多くの人は、支払う額は同じなのに消費税込みの価格を見せられると高いと感じ、消費税抜きの価格を見せられると安いと感じます。では電力の価格について、単価がいくらかを知って使っている人は一体どれほどいるでしょうか。実際に、私自身よく調べずに使っていました。
過去の研究で電力価格の上昇が大きな需要の減少をもたらさなかった原因として、この「価格の見えにくさ」が大きいと私は考えています。ガソリンの料金のように、現在1リットル何円なのかがハッキリ書いてあれば、高い安いがよくわかりますし、より敏感に価格に反応して消費者は需要を調整するはずです。
この問題は料金単価の引き上げを有効に行う際に、極めて重要です。もしも、単価の引き上げをしているのに、消費者がそのことに気がつかなければ電力消費の抑制効果が小さく、結果として3.5倍の単価上昇が必要になるかもしれません。逆に単価を「見える化」して、ニュースや携帯などでリアルタイムに電気料金を伝えることをすれば、人々はその時間帯だけ電気の使用を自発的に控えようとするはずです。
テレビのCMやニュースで、こんなメッセージが流れているところを想像してみてください。
「現在電力使用が供給能力の90%を超えました。需要抑制のため電気料金単価が70%上昇しています。電気の使用を控えましょう」
余計な電灯や使っていないパソコンを消そうという節電努力が自然に引き出されると思いませんか?
さらに、供給能力の95%を超えたら緊急地震速報のような形で「電力需要が一時的に供給能力を超えて大規模停電が起こる恐れがあります。パソコンなどのデータを保存し、停電時の故障が心配される電子機器はコンセントからはずしましょう」などといったメッセージが伝えられれば、より大きな節電を引き出すことも可能でしょう。