OECDは今年の4月21日に1年半振りに対日経済審査報告書を公表したが、その中で「消費税率は20%程度まで引き上げることも求められる」と指摘した。またIMFは今年の6月16日に公表した報告書の中で、「高齢化に伴う歳出圧力の高まりに直面する日本の財政再建には、消費税増税が最も適しており、2012年から6年間で段階的に15%まで引き上げるよう」提言した。

 OECDやIMFの提言の背後には、わが国の国民負担率が低いという事実がある。すなわち社会保障負担率と租税負担率を合算して、国民所得比で見ると(出所:財務省HP国民負担率の国際比較)わが国の38.8%に対して、英国が46.8%、ドイツが52.0%、フランスが61.1%、アメリカが32.5%となっている。アメリカ一国だけがわが国より低いが、これは社会保障負担率がわが国(16.8%)の約半分(8.6%)であることが主因であって、租税負担率については大差がない(日本:22.0%、アメリカ:24.0%)。

 すなわち、外から見れば、わが国は少ない税金でたくさんの社会保障給付を支出している訳であるから、両者のバランスが取れるように増税を行うべきだし、仮に増税を行っても諸外国と比べて決して国民負担率が過重になる訳ではない、と見えるようだ。このように租税負担率にまだ余裕のあることが、わが国の国債の格付が(膨大な借金にもかかわらず)高位安定していることの証左でもあろう。

 因みにEUでは、社会保障財源を確保することを目的に、加盟国に付加価値税(わが国の消費税に相当)を最低15%とするように求めている。

 このような外からの眼に対して、わが国の政府が自らに課した一体改革成案は「2010年代半ばまでに消費税率を10%に引き上げる」ことであった。時期・上げ幅共に、中途半端な感じを与えるだけではなく、閣議決定ではなく閣議報告となったため、菅内閣の本気度が疑われても仕方があるまい。もっとも10%という税率そのものは自民党も是認している水準であり、増税に向けて2大政党の足並みが揃ったという点では、それなりの意味があると考える。

消費税は素直に見れば公平な税である

 増税の話を持ち出せば必ず寄せられるいくつかの反論がある。まず消費税の逆進性という話が持ち出される。すなわち消費税は消費のうち生きていくために最低限必要な食費などの割合の高い貧しい人ほど負担が重くなるという話だ。これに対しては英国などのように食料品や医薬品を非課税にするという方法が考えられる。また、そもそも論で考えれば、別の考え方もありうる。