信用経済が多極化するなか重要なのは
誰と付き合い、信用を創造するか

 そのような世界においては、お金をいくらもっているかよりも、その前提となる「信用(クレディット)」をいくらもっているか、が重要になってくるのだ。信用の“結果”であるお金を持っていることよりも、信用“そのもの”を保有していることのほうに価値がある。

 信用は貨幣の形を取らずに増幅されて利子を生み、そして信用のある「つながり」自身が取引されるようになる。

 僕はベンチャーの社長をやっていたので、ベンチャー企業の社長にとっての一番のリスクは、物が売れないことではないとよく知っている。そうではなくて、誰と付き合うかがもっとも重要なのだ。一番怖いことは、グレーな人々と一連托生になることである。

 「あの人はあの人と取引してた」というようなことが、ベンチャーの信用の全てである。その会社が財務的に潰れるかどうかという与信よりも、何を、どういう価値観で、どういうミッションで、どういうビジョンで、何をやってるか、という裏付けをとって、互いに関係を築いてゆくことが、ベンチャー企業の経営の要諦であることを、ベンチャーの経営者なら誰でも知っている。

 21世紀は、企業や個人がお金を「発行」する時代。

信用創造が多極化する分散型“信用主義経済”をよりよく生きるコツは、今、流通しているハードマネーを1億持つとか、そういうことではない。誰とつきあうか、どう信用を創造するか、信用とは何か、といったことを丁寧に考え、咀嚼し、行動に結びつけていくことこそが重要なのだ。

 次回は、個々人の信用がさらに明確になると、経済活動において「貨幣がショートカット(中抜き)される世界」について書きます。


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