偉大な松下幸之助ではなく、神様の人間くさい部分を描きたかった

――ロケでは、幸之助夫妻が実際に住んでいた家も使われたと聞いています。

 これは原作の中にも出てきますが、幸之助さん夫妻は戦前、西宮市の広大な敷地に、光雲荘という建物を作られたんですね。今は建物だけが枚方に移築されていまして、ここでロケをしました。第3話で出てきますが、いろんなシーンを撮っています。

――骨太なドラマが見られる、と人気だった土曜ドラマですが、リニューアルをされたのですね。

 土曜日の10時からの枠は、半年前まで「土曜ドラマ」だったんですが、実は春から半年間、休止していたんです。よりスペシャル感を出していこう、というコンセプトで、「土曜ドラマスペシャル」に生まれ変わりました。

 今回は3回シリーズですが、多くは前編・後編の2回のみ。シリーズが短い分だけ内容を深くして、より特別感のあるドラマにする、というコンセプトなんです。

 目指しているのは、見応えのある良質なドラマです。また、以前の「土曜ドラマ」は、スーツを着た男性がしかめっ面で画面に映る、といったハードな内容のものが多かったんですが、今後は女性を主人公にするなど、テーマも幅広くして、見応えのある内容を追求していきたいと考えています。

――ドラマ『神様の女房』のみどころは、どんなところでしょうか。

 夫婦の物語として、出演者のみなさんにじっくりお芝居に取り組んでもらった、というところを強調しておきたいですね。内容としてサスペンスがあるとか、アクションがあるとか、そういうことではないので、きちんとした、質の高いお芝居が求められたドラマでした。

 とりわけ、常盤さんと筒井さんには、本当に素晴らしい演技をしていただけました。夫婦の言動は、相当なリアリティがあると思います。何十年も連れ添った夫婦なら、きっとこういう場面では、こういうコミュニケーションをするだろう、という奥深いシーンがいくつも出てきます。お芝居の素晴らしさを、ぜひ見ていただければと思います。

 また、当初のドラマの狙いでもあった、幸之助さんの人間としての部分も、かなり垣間見られると思います。経営の神様と言われて、ある種、時代のリーダーとしてカリスマ的な存在だったわけですが、やっぱり人間はそれだけではないと思うんです。

 もっと人間的な部分、例えば、神経質なところだったり、すぐに怒り出すところだったり、そういう聖人君子ではない、等身大の部分が描かれています。これは私自身が見て思ったんですが、だからこそ共感できるんです。なるほど、幸之助さんでさえもそうだったのか、ということも含めて。やっぱり人間は、イライラしてもいいんだな、と(笑)。

 今回のドラマは。偉人伝を描きたかったのではなくて、偉大な人の、あまり見られない本当の姿が見たかったんです。実際、幸之助さんにしても、むめのさんにしても、もちろんすごい人たちだったわけですが、そうではないところもまったくなかったわけでない。

 例えば、お互いに一言多かったり(笑)。でも、多くの夫婦がそういうことで夫婦ゲンカをしたり、お互いにムッとしたりしているわけですよね。でも、そういうところもまた、夫婦で生きていくための、実は牽引力になっていたんだろうな、ということが想像できるんです。どの家でも、多かれ少なかれ、きっとある。でも、それは、実は意味のあることだった、ということにも気づいてもらえれば、思います。

――特に注目のシーンには、どんなところがありますか。

 やはり冒頭ですね。何のシーンかは申し上げられませんが、華やかで、賑やかで、二人を象徴するようなシーンになったと思っています。実際、このシーンは、後に重要なシーンとして描かれることになります。楽しみに見ておいていただければと思います。

プロデューサーが語る<br />NHK土曜ドラマ『神様の女房』の魅力<br />
真鍋斎(まなべ・いつき)
NHK土曜ドラマスペシャル「神様の女房」制作統括。1967年生まれ。91年東京大学卒業。91年NHK入局。朝ドラ「こころ」「風のハルカ」「芋たこなんきん」大河ドラマ「北条時宗」「龍馬伝」等を演出し、現職はNHKエンタープライズエグゼクティブプロデューサー。


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プロデューサーが語る<br />NHK土曜ドラマ『神様の女房』の魅力<br />

松下幸之助を、陰で支え続けた“もう一人の創業者”、妻・むめの。五里霧中の商品開発、営業の失敗、資金の不足、関東大震災と昭和恐慌、最愛の息子の死、そして戦争と財閥解体…。幾度も襲った逆境を、陰となり日向となり支え、「夫の夢は私の夢」と幸之助の描いた壮大なスケールの夢を二人三脚で追いかけた感動の物語。

 

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