かつての学生は少数派にも敬意を払っていた
現代の学生は少数派になることを極端に怖れる
これまで、私たちは少数派を「個性的な意見」「ユニークな考え方」と尊重しようとしてきました。
しかし、前回お話ししたように、市場原理主義的な発想が優勢な現在では少数派は負けとみなされ、少数派を「カッコイイ」と見る価値観がなくなっています。
いつの時代も、学生たちの間にはファッションや生活スタイルにある種のトレンドが生まれるものです。70年代から90年代には「ハマトラ」「聖子ちゃんカット」「ワンレン・ボディコン」などといったトレンドが現われました。
その傾向は現代の学生も同じことだと思います。学生がこぞって同じような格好をしたのは今に始まったことではありません。
ただ、当時はそういうトレンドとは無関係なファッションやスタイルを意識的に取り入れる人がいました。
結果的にはもちろん少数派ですが、他人と合わせないことがカッコイイという少数派としての自負も持っていたように思います。そして、一方の多数派の人たちも、少数派に対して敬意のようなものを抱き、少数派の存在そのものを認めて決して排除はしていなかったような気がします。
しかし今の学生は自分を押し殺し、なるべく周囲に合わせようとしているように見えます。同じような格好をしている学生たちに個別に話を聞くと、必ずしも好きなファッションやスタイルが同じというわけではありません。実際に身につけているものと実際の好みが一致しているとは限らないのです。
「じゃあ、好きな格好すればいいじゃない」
私がそう勧めても、学生は「そんなことをしたら浮いてしまう。変わったヤツだと思われてしまう」と言います。その言葉から、仲間うちで少数派になることを極端に怖れる姿が浮き彫りになってくるのです。