だけどそれは全部、旅行地としての一時的なものばかり。「日本で発展したい」、「未来をかけたい」という言葉は、あまり聞かない。

 まだファックスすら使っている日本は、逆に“奇異な国”なのである。

政府批判ができる、警官が威張っていない…
心からの「日本いいなあ」は中国の現体制批判に

 彼らの心からの(日本いいなぁ)は、中国の現体制批判につながることだ――。

中国人が日本人には絶対言わない日本旅行の意外な本音谷崎光さんの『本当は中国で勝っている日本企業 なぜこの会社は成功できたのか? 』(集英社刊)が好評発売中。240ページ、1512円(税込み)

「中国だってもう10年すれば、日本みたいな選挙があるんだ!」「誰もが気軽に病院に行けるなんていいね。うち、おじいちゃん、手術せず死んだよ」「警官がこっちに道ゆずった!威張っていないんだね」「不正や賄賂が少ない。まじめ。でも中国のほうが儲かる」「日本は公開で政府批判ができる」

 日本のそこは認める。民度の高さも認める。しかし、結論は、

「日本で遊ぶのはいいけど働きたくない。ストレス強そうで、人と人との関係が冷たそう」

 中国の内陸の安徽省に西逓・宏村という有名な観光地がある。

 昔栄えた村で、中国らしくなく、古い建築がそのまま保存されている。水もきれいで汚染されていない。交通が隔絶されており、閉じた社会で人々は非常に善良で騙す人がいない。しかし老人ばかりで、たまにいる若者は足抜けできず不機嫌そうである。取り残され物価も安い。

 ここに発展に疲れた都市部の中国人たちが、近年のひなびた田舎観光ブームで観光バスを仕立てて大挙して押し寄せている。そして短時間のうちにバーっと消費し、帰っていく。「いいね、いいね」と言いながら。

 中国の桃源郷と呼ばれるここ、私は日本に重なるのだが、どうだろうか。