だけどそれは全部、旅行地としての一時的なものばかり。「日本で発展したい」、「未来をかけたい」という言葉は、あまり聞かない。
まだファックスすら使っている日本は、逆に“奇異な国”なのである。
政府批判ができる、警官が威張っていない…
心からの「日本いいなあ」は中国の現体制批判に
彼らの心からの(日本いいなぁ)は、中国の現体制批判につながることだ――。
「中国だってもう10年すれば、日本みたいな選挙があるんだ!」「誰もが気軽に病院に行けるなんていいね。うち、おじいちゃん、手術せず死んだよ」「警官がこっちに道ゆずった!威張っていないんだね」「不正や賄賂が少ない。まじめ。でも中国のほうが儲かる」「日本は公開で政府批判ができる」
日本のそこは認める。民度の高さも認める。しかし、結論は、
「日本で遊ぶのはいいけど働きたくない。ストレス強そうで、人と人との関係が冷たそう」
中国の内陸の安徽省に西逓・宏村という有名な観光地がある。
昔栄えた村で、中国らしくなく、古い建築がそのまま保存されている。水もきれいで汚染されていない。交通が隔絶されており、閉じた社会で人々は非常に善良で騙す人がいない。しかし老人ばかりで、たまにいる若者は足抜けできず不機嫌そうである。取り残され物価も安い。
ここに発展に疲れた都市部の中国人たちが、近年のひなびた田舎観光ブームで観光バスを仕立てて大挙して押し寄せている。そして短時間のうちにバーっと消費し、帰っていく。「いいね、いいね」と言いながら。
中国の桃源郷と呼ばれるここ、私は日本に重なるのだが、どうだろうか。