被災地に生まれた「小さな違い」で一体感が揺らいでいる
最近、仕事で東日本大震災の被災地に行く機会がありました。
自治体の人や支援に携わる人たちの話を聞くと、震災から1年近く経って被災者の状況に変化が起こり始めているといいます。
震災から時間が経つにつれ「小さな違い」が顕著に現れてきました。たとえば仕事の面だけを考えても、早い時期に仕事が見つかった人がいる一方で、なかなか見つからずに今でも求職を続けている人がいます。
「あの人だけ見つかってずるい。私だけ損をしている」
こんな不満をあからさまに口に出す人はいないようですが、ちょっとした違いに不満を抱える人も増えてきているようです。
特に福島では「小さな違い」が目立っています。原発事故で家に戻れない人や、別の場所へ行ったきりの人は別にして、事故発生直後や夏休みの間など一時的にそこを離れた人とそのまま居続けた人の間に、何かぎくしゃくとした空気が流れているというのです。
医療関係者の例で言うと、一時的に被災地を離れた医療関係者と、現地に残って医療に従事した人がいます。特に医療従事者としての強い使命感をもって残った人は、あまりはっきりとは言わないにせよ、一時的に離れた人に対して複雑な感情を抱いています。反対に、一時的に離れた医療関係者にも負い目を感じている人がいるようです。
震災から1年が過ぎようとしている今、こうした「小さな違い」が顕著になればなるほど、震災初期にあった「被災者全員が何事も共有し、みんなで一緒に頑張ろう」という雰囲気が揺らいでいきます。