人は誰でも風邪をひく。しかし、いつもピンピンしている人がいる。彼らには「早期発見・即対処」という共通点がある。風邪をひきそうになっても悪化させないから、周囲から「風邪をひいているように見えない」のだ。では、彼らはいつ、何をしているのか?

本記事では、現役の内科医、救急救命医、薬剤師などの知見と医療統計データ、150近くの最新の医学研究論文や文献を総動員し、「医学的に正しい風邪対策」を紹介する裴英洙氏の新刊『一流の人はなぜ風邪をひかないのか?MBA医師が教える本当に正しい予防と対策33』から、内容の一部を特別公開する。(構成:今野良介)

鼻が詰まると風邪をひきやすくなる理由

花粉症の季節が到来し、鼻づまりで仕事や勉強に集中できず、悩まされている人も多いでしょう。

鼻は、超高性能の空気清浄機であり、加湿器であり、異物除去装置です。冗談ではなく、高価な電化製品の清浄機や加湿器を買うより、「鼻の通りをよくしておくこと」にお金を費やしたほうが、風邪予防としての投資効率は高いでしょう。

鼻の最も重要な機能は「加温」と「加湿」です。

冷たい外気を鼻で吸入すると、のどに流れていく過程で温度30℃前後、湿度90%前後にまで加温・加湿されます。鼻で呼吸すれば、潤いがあり、温かい空気が、のどの奥から肺へ流れていきます。

もう1つの空気の入り口である「口」には、鼻ほどの加温・加湿機能はありません。冷たく乾燥した空気を口から吸い込むと、そのまま直接のどの奥に入りやすく、気管を痛める原因になります。

また、鼻から吸い込まれたゴミやほこり、細菌、ウイルスなどの異物は、鼻の粘膜で産生される粘液と、鼻の奥の内側を覆っている綿毛の運動によって絡みとられ、鼻の奥に運ばれていきます。その結果、たんとして体外に排出されます。

鼻水やたんを飲み込んだ場合は、消化管の中で消化液によって分解されますが、異物を体内に取り込むことになりますから、鼻水やたんは、できる限り飲み込まずに体外に排出しましょう。

鼻粘膜で生産される分泌液の中には「分泌型IgA」という物質が多量に含まれていて、細菌などが細胞の表面に付着するのを防ぎます。さらに、異物、冷気、刺激物質などが鼻粘膜を刺激すると、くしゃみ、鼻汁、鼻粘膜腫脹、声門閉鎖などの反射をひき起こし、のどの奥へ異物が侵入するのを防ぐ働きがあるのです。

つまり、できる限り鼻呼吸を意識し、鼻の保湿機能や異物除去機能を活用することが、風邪予防につながるのです。

花粉症と風邪っぴきの意外な「相関関係」花粉対策は風邪予防にも関係がある

鼻の通りが悪いと口呼吸に偏り、のどが渇きやすくなります。のどにウイルスが吸着しやすくなり、風邪ウイルスの侵入を許しやすくなるのです。