スポーツ選手は、競技に入る前に準備運動、いわゆるアップをしますよね。人前で話すプレゼンなどの前にも「アップが必要」というのはメディアトレーナーとして芸能界のトップアーティストを指導する中西健太郎さん。今回は中西さんの新刊『姿勢も話し方もよくなる声のつくりかた』より、話す前に効果的なアップの方法やその重要性についてお伝えします。

 みなさん、スポーツ選手が準備運動、いわゆるアップをしている光景はよくご覧になると思います。ピッチャーならブルペンで何球か投げてから試合に出ていくし、サッカー選手は出番の前にジョギングや柔軟体操をしたりして準備をします。みんなで円陣を組んで気分を高めたりしますね。

スポーツで円陣を組んで、気持ちをひとつに気分を高めるのと同じように、人前で話すプレゼンなどの前には気分を高める「アップ」が不可欠!

同じように、声を出す前にも、事前の準備運動と気持ちを高めるアップが必要です。

 声は筋肉を動かして出すので、スポーツと同じなのです。たとえば大事なプレゼンのとき、緊張した状態でそのまま本番を迎えると、筋肉も動きませんし、相手に気分で圧倒されたりして、思ったように声が出ません。

 僕はアナウンサーの指導をするために、報道番組の現場などにも立ち会うことがあります。なかには、本番前に原稿を練習で読む下読みという作業でぼそぼそとつぶやくように声を出し、そのまま本番のスタジオに出ていく新人アナウンサーさんもいます。これだと、明らかに準備運動も緊張のコントロールもできません。ですので、「アップをしないと、本番のときに声が出なくなってしまいますよ」と伝えました。

 コンサート前のアーティストも、入念にリハーサルをしたうえ、開演の直前にはメンバーが円陣を組んで「オーッ!」とかけ声をかけるなどして気合いを入れていますよね。極端にいえば、話す前もあれと同じような準備が必要です。
 というのも、人に何かを伝えるというのは、すごくエネルギーのいることです。そこへ素のまま出ていくと、相手のエネルギーに圧倒されたり、変に緊張してしまいます

 エネルギーは高いほうから低いほうへ流れるので、観客が何万人もいるコンサートホールでみんなを感動させようと思えば、自分のエネルギーを相当高めてから出ていかないと、お客さまのエネルギーに圧倒されてしまいます。一般の方の場合、そこまで大きなエネルギーはいらないまでも、やはり相手を納得させたりその気にさせるにはそれなりに高いエネルギーが必要です。

 そして、本番はドキドキするという人がいますが、実際のところスポーツであれビジネスの大事なプレゼンであれ、心拍は少し上げていくぐらいでちょうどいいのです。
 シアトル・マリナーズにいた長谷川滋利投手は、いつもハートレートモニターを使って、試合前に心拍をチェックし、低すぎたら上げて高すぎたら下げるようにしていたといいます。

 スポーツでガチンコ勝負をしようというときや、人前で話すときには、通常より心拍が高いくらいでちょうどいいのです。でも高すぎたら、コントロールを失ってしまう。そのちょうどいいバランスを自分で知ることができたら、しめたものです。