「いい声」を出すには、口の「中」の感覚を高めて敏感にすることが大切、というのはメディアトレーナーとして芸能界のトップアーティストを指導する中西健太郎さん。今回は中西さんの新刊『姿勢も話し方もよくなる声のつくりかた』より、口の中の感覚を高めるために有効な毎日の習慣についてお伝えします。
みなさん、何気なく毎日の歯磨きをされていませんか。
実は歯磨きのときに、“ある場所”を一緒に磨くだけで、発声の感覚が格段に増すので、ぜひ試してほしいです。
どこだと思いますか?
それは、口蓋(上あご)と歯茎(はぐき)、舌です。
多くの方が、歯磨きでは「歯」を磨いていると思います。一部の方は、「舌」もブラッシングされているかもしれません。
でも、口蓋と歯茎はいかがですか。
発声するときに、喉のほか、胸と頭部の空洞を響かせることについては触れましたが、実は口の中の感覚を高めていくことも非常に重要です。ただし、口の中というのは、体の外側の器官と違って、感覚を高めるといっても難しいですよね。
発声法では「軟口蓋(なんこうがい)を上げて」とか「舌根(ぜっこん)を下げて」といった専門用語を聞く人もいると思いますので、簡単に説明しておきましょう。
口蓋は軟口蓋と硬口蓋(こうこうがい)の2つに分けて扱われることが多いのです。
ご自分の上あごを、舌で触れてみてください。
すると、歯に近いほうは骨がありますので、硬い感触があるはずです。でも、ずっと奥の喉のほうに近づくと、突然ブニョッと軟らかい場所があるはずです。そこが軟口蓋です。
この軟口蓋と舌は普段意識しづらいところなので、歯磨きのついでにブラッシングするクセをつけていただきたいのです。
ただ、軟口蓋も舌もデリケートで傷つきやすいので、ブラッシングというより軽くトントンと叩く程度にやってみましょう。
ブラッシングされることで刺激されて、周辺の感覚が敏感になり、コントロールしやすくなるのです。舌根や軟口蓋を動かそうとしたときに、ラクに意識したり動かしやすくなって、発声をコントロールしやすくなります。
右利きの人は、普段あまり使わない左手をコントロールしづらいですよね。それと同じで、日常的に使っていない器官はよりコントロールしづらいので、歯磨きついでに発声のトレーニングをしてしまおう! というわけです。
このことは医学的にも証明されていて、飲み物を飲み込むときに気道に入ってむせやすい人に口蓋のブラッシングを勧めたところ、素晴らしい改善が見られたそうです。しかも、飲み物が気道に入りづらくなっただけでなく、細菌が肺に入り込むのを阻止し、風邪や結核の予防にもつながることがわかったといいます。
風邪や体調不良は発声の大敵ですから、このブラッシングひとつを加えることで、その予防まで兼ねてくれる素晴らしい歯磨き法です!