ちきりん  なぜ、日本のビジネススクールはダメなんですか?

竹内  日本のビジネススクールは、アメリカなど世界の一般的なビジネススクールに実際に行ったり、ビジネスの実務の経験もない人が、スナップショットのように、マネジメントのある部分だけを教えている。

ちきりん  知識だけ、ちょこちょこ教えてるということですか?

竹内  でも、本質はわかってないです。私も、ある大学のビジネススクールに、会社から行かされたことがあるんです。マスコミで有名な人が講師をやっていたんですが、あまりに内容がなくて、1ヵ月で辞めてしまいました。

ちきりん  スタンフォードのビジネススクールとは、何が決定的に違ったんですか?

竹内  ビジネススクールなのに、マネジメントとは、ビジネスとは何かがわかってない。マーケティング、ファイナンスから、人のマネジメントに至るまで、マネジメントって幅広いもの。こういった経営の様々な側面を全て俯瞰した上で、決断する。それを例えば、金融や工場の運営と言った、経営のごく一部だけ切りだして教えても、マネジメントの教育にはならない。日本で一番ビジネススクールに近いのは教養学部だと思っているんですよ。

 それにビジネススクールって、本来、ビジネスオリエンテッドなんですよ。アカデミアではない。このスタート地点から理解がされていませんよ。

ちきりん  アメリカのビジネススクールって職業訓練学校ですよね。日本の大学では、アカデミックなほうが実務的な学問より圧倒的に価値が高いと認識されています。商学部より経済学部のほうがアカデミックだから格上だと思われてるし、工学部より理学部、理学部の中でも数学がいちばんエライみたいな感じ。実用的な学問、実践的な学校に対しては、1つも2つもランクが下だと見ている。だからビジネススクールを作ってもいい先生が集まらないのでしょうか?

竹内  工学部系の学科の中には、学科に直結する業種そのものがほとんど消えてしまったとか、時代遅れの分野で学生が集まらないとかの理由で、学科として潰れてしまったものもあります。ところが、大学のビジネススクールの中には、そのような学科としてダメになった分野の先生が、堂々とMOT(Management of Technology)とか「技術経営」と名乗って授業をやっているところもあるんです。

ちきりん  まじですか……。それって、不要な事業部をつぶせない会社と同じですね。本来ならその学科を潰して教授にも退職をお願いし、ビジネススクールに適した新しい人材を教授として雇ってくるのが筋ですよね。それなのに、古びてダメになった学科の先生に、いま流行りの技術経営を教えてもらいましょう、というのはどう見てもムリがありますね(笑)。