パーソナルモビリティのブルー・オーシャンは、誰が切り開くのか?

ホリエモンが本屋を経営する、ブルー・オーシャンな理由ムーギー・キム
ブルー・オーシャン・シフト研究所日本支部 代表
慶応義塾大学総合政策学部卒業。INSEADにてMBA(経営学修士)取得。外資系コンサルティングファーム、投資銀行、米系資産運用会社、香港でのプライベートエクイティファンド投資、日本でのバイアウトファンド勤務を経て、シンガポールにてINSEAD 起業家支援企業に参画。
INSEAD時代に師事したチャン・キム氏に任じられ、世界中に拠点を有するブルー・オーシャン・シフト研究所の日本支部の代表として、新刊『ブルー・オーシャン・シフト』では、付録の日本ケースの執筆を担当している。著書に『一流の育て方』(ダイヤモンド社)『最強の働き方』(東洋経済 新報社)、『最強の健康法』(SBクリエイティブ)などがある。』

堀江:今、パーソナルモビリティはiPhoneが出る前のPDAが使われていた時と、同じ状況なんですよ。まだiPhoneのような正解が出ていない。これからどうなるかと言うと、僕は公共交通とのハイブリッドになると思っていて。
 現在出ているパーソナルモビリティには、セグウェイとか、シャオミ傘下のNinebotの製品とかがある。けれど、こういった形ではなく、僕は、これから広まるのは、椅子の延長だと思っている。
 今、椅子に座っているじゃないですか。

ムーギー:はい。

堀江:僕の椅子じゃないから、長時間ずっと座っていたら、多分腰が痛くなると思うんですよ。何でそんな椅子に座っているんだろうと思いませんか。人の携帯電話は使わないのに、みんな自分の椅子じゃない椅子を使っていますよね。

ムーギー:じゃあ、自分にカスタマイズされた椅子が、パーソナルモビリティとして広がるイメージですか。

堀江:そう。それが勝手に動き回る。姿勢制御機能が付いていて、自動運転機能が付いていて、自分のクラウドにある自分の予定とも、連携している。すると、僕が次にどこへ行くか分かっているでしょ。時間になったらアラートが出て。

ムーギー:うーん、そうですか?そんな大それた開発投資を正当化するほどのペインポイントが椅子市場にあるか、私には分かりませんが、そういう可能性もあるんですね。

ホリエモンが本屋を経営する、ブルー・オーシャンな理由

堀江:で、「行く?」って表示されるから、OKする。「でも、ちょっと10分ちょっと延長するわ」って言ったら、10分延長して、その場にとどまる。その間に、最適ルートを計算して、「もう出発しないと、最短ルートでも指定時間に間に合いません」みたいな表示が出る。
 そして、そのモビリティに乗ったまま、エレベーターで下まで降りる。道路に出て、バスに乗る時には、バスがバリアフリーになっているから、そのまま乗れる。

ムーギー:バスと一緒に椅子が移動していくということですか。

堀江:そう。バスの中には、車いす専用ゾーンのような、パーソナルモビリティ専用ゾーンがある。そこにアダプターが付いて、そこに自動的につながる。今は備え付けの椅子があるけれど、将来的には椅子がない、がらんどうの空間でバスは走る。

ムーギー:で、みんなが自分のパーソナルモビリティに座っている、と。

堀江:今度は最寄りの電車の駅に着いて、そこで降りて、電車にまた同じようにモビリティを接続する。そして、自宅の最寄り駅まで移動する……。
 つまり、パーソナルモビリティは、長距離移動の手段というよりも、ラストワンマイルの移動手段になるんです。利用距離が短いから、電池問題もそんなに関係ない。
 あとは、最後のキーデバイス、「パーソナルモビリティのiPhone」が出てくる必要があるんです。このiPhoneをみんな今、探しているんですよ。シャオミとかグーグルとか、アマゾンとか…多分みんなが探しているはずです。

ムーギー:「パーソナルモビリティのラストワンマイル」ソリューションに関し、さまざまなプレーヤーが正解を求めているんですね。

堀江:この正解が、数年以内に出てくると思います。そして、数年以内に出てきたら、社会はガラッと変わる。
 iPhoneが出てきた時に、車にUSBポートが付くようになったじゃないですか。自動車メーカーが、ニーズに応えるために勝手につくった。パーソナルモビリティが広まれば、公共交通機関が勝手にそれに対応する仕組みをつくると思うんですね。
 最終的に、「おまえ、なに既成の椅子に座ってんの、かっこわりー」みたいな感じになって、みんながそのデバイスを買い求めると。

ムーギー:なるほどね。もはや私にはついていけない“椅子へのこだわり”ですが…

堀江:しかも、カスタマイズができる。例えば骨振動スピーカーが付いてたり、日よけや雨よけが付いていたりとか。いろいろなオプションが考えられるから、サードパーティーが参入する余地もある。時速は6km/h未満なので、ほとんどの国で交通規制も受けずに、公道を走れる。
 これが将来の姿じゃないのかなと思うんですね。

ムーギー:ひょっとすると椅子を移動させるのではなく、パーソナルデータをスキャンするなどして、その個人に最適化した形に変形する椅子とかはあり得る気もします。パーソナルモビリティのブルー・オーシャンを、誰がどう具現化するのか、考えてみると面白いですね!