訓練を極め、YouTubeのヒットコンテンツに

「ふくこいアジア祭り」初出場から5年めに、本場の札幌の「YOSAKOIソーラン祭り」に殴りこみをかけた。

 札幌では、40人未満のグループのなかで競うことになった。
 65チームが出場しており、そのうちおよそ8割が北海道内のチームだ。
 アウェイ状況での戦いとなることを覚悟して臨んだ。

 さすがに本場だけのことはある。
 ほとんどが女性中心のチームで、カラフルな法被(はっぴ)など、和装をアレンジした衣装とキレのある演舞で観る者を魅了する。

「YOSAKOIソーラン祭り」で勝つための勘どころも押さえた演舞なのだろう。
 優勝候補とされるチームのみならず、いずれもレベルが高い。
 アウェイということを考えあわせると、入賞は難しいかもしれない。

 JR九州櫻燕隊は男性と女性から成る混成チームで、鉄道員の制服をアレンジした紺色の硬派な衣装は大会で異色の存在だった。

 入賞も難しいかもしれない。半ばあきらめはじめていた。
 いよいよ、JR九州櫻燕隊の演舞がはじまった。

 すると、「行動訓練」ふうのきびきびとした演舞に、北海道のひとたちが驚きの表情を浮かべている。
 少々荒っぽくいえば、度肝をぬかれていた。
 審査員たちも目を輝かせて演舞に見入っている。
(ひょっとしたら、かなりいいところまで行くのでは……)

 結果は、なんと初出場初優勝
 アウェイ、初出場といったハンディを克服して栄冠を勝ち取った。
 そんなJR九州櫻燕隊の演舞は、まさに「氣」そのもの、そして「氣」のもたらした美しい成果だった。

 後日談。
 一度優勝するのも難しいことだが、連続優勝はもっと難しい。
 JR九州櫻燕隊は、連覇を目指して翌年再び札幌の地に立った。
 まさか“よそ者”が連覇を達成するなんてことを北海道のひとたちが許すわけがない。

 すべての演舞が終わったあと、入賞の発表を虚心に待っていると、アナウンスが流れた。

「大賞は、JR九州櫻燕隊です」

 連覇を成し遂げてしまった。
 JR九州櫻燕隊の演舞は、YouTubeにもいくつも投稿されているので、ぜひご覧いただきたい。

☆ps.
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