先日、東京医科大学の入試において、女性受験者などが不利になるような得点操作が行われていた事件が明らかになり、波紋を呼んだ。

本記事では、元NHKアナウンサーの小論文講師で、『全試験対応!直前でも一発合格! 落とされない小論文』の著者「ウェブ小論文塾」代表・今道琢也氏が、不透明に思われがちな「小論文試験の採点方針」を明らかにする。(構成:今野良介)

小論文試験には
明確な「採点方針」がある

先日、東京医科大学の入学試験で、女性受験者や複数年浪人を繰り返した受験者の点数を抑える操作をしていた問題が明らかになりました。報道によれば、小論文試験において得点操作が行われていたということです。

これを受けて、文部科学省が2018年9月4日に発表した、全国の医学部の入試状況に関する緊急調査の結果、全国の医学部のうち8割近くで男子の合格率が高かったことが示されています。また、東京医大を除く各大学は、女性や浪人生などに対する一律の点数調整や特定の受験者に対する加点などは「なかった」と回答している、と報じられました。

私が、小論文の指導者として、これまで数千枚の答案を見た限りでは、小論文の答案水準に男女差はない、といえます。

受講者の割合は、女性のほうが多いです。また、早い時期から申し込んで勉強に取り掛かる人には女性が多い傾向があり、女性のほうが熱心だといえそうです。

本来の小論文の採点基準に男女差などない。

そもそも、小論文試験は、はっきりした採点基準や評価の根拠が知られていません。今回の問題を機に、ますます「不透明な試験なのではないか」という印象を持たれたり、「努力しても無駄なのではないか」と思う受験生が増えてしまうことを、私は強く懸念しています。

そこで本記事では、「小論文試験には、きちんとした採点方針がある」ということを、具体的にお伝えします。

まず、小論文試験における「良い答案」とは、どういう答案なのでしょうか。

それは、
(1)問題の意味を正確に理解して書いている
(2)具体的で抽象論に逃げていない
(3)簡潔で話の筋道が通っている

この3点が揃った答案です。
(大学入試ではこれに加え、「主張の独自性」も重視される場合があります)

公務員試験や教員試験、大学入試など、さまざまな小論文試験の受験案内を見ると、小論文の採点のポイントとして「課題把握力、着想、思考力、論理性、文章構成力、表現力」などと書かれてありますが、これらは、上記の3つを言い換えたものです。どんな試験であれ、共通して印象を大きく左右するのは、この3点だといえます。

まず、1つ目の「問題の意味を正確に理解して書いている」。当たり前のことだろうと思うかもしれませんが、裏返せば、それができていない答案がたいへん多い、ということです。

下記をご覧ください。これは、私が『落とされない小論文』を執筆する中で、数千枚の失敗答案から独自に導き出した「減点要因ランキング」です。

全小論文試験共通の
「やりがち順」減点要因ランキング12

ワースト1位】問題文の指示に正しく答えていない
【ワースト2位】「具体的な言葉」で書けていない
【ワースト3位】「資料」を正しく扱っていない
【ワースト4位】要約が「本文の切り貼り」になっている
【ワースト5位】課題文を無視して自分の意見を書く
【ワースト6位】課題文の趣旨をそのままなぞって書く
【ワースト7位】ムダな言葉が多い
【ワースト8位】解答のバランスが悪い
【ワースト9位】消極的な表現で印象を落とす
【ワースト10位】話の流れが整理されていない
【ワースト11位】課題解決型の問題を「一点突破」で押し切る
【ワースト12位】事前に準備した筋書きやキーワードを書く

これを見ると、1位、つまり、小論文受験生がもっともやりがちなミスは、「問題文の指示に正しく答えていない」です。私が指導する受講生の、実に半数以上が、このミスを犯しているのです。

たとえば、次のような例が挙げられます。

・「筆者の意見を踏まえ、あなたの考えを述べなさい」と聞かれているのに、筆者の意見を踏まえないで書いている答案。

・「あなたにとって『表現する』とはどういうことか、考えを述べてください」と聞かれているのに、一般的な表現論に終始している答案。「あなたにとって」という視点が欠けている答案。

このように、問題文の指示をきちんと守れているかを、採点者はまず着目します。

ここがズレてしまうと、答案を書く方向がそもそも違うのですから、当然ながら、大幅な減点対象になります。

「具体的でない答案」の例

2つ目の「具体的で抽象論に逃げていない」も、大切なポイントです。

たとえば、昇進試験の小論文の答案で、

「私はこれから職場の人たちと様々な形でコミュニケーションを取り合っていきたい。日常的なコミュニケーションの積み重ねによって、仲間と強い信頼関係を作り上げていきたい」

というように書いたとします。

しかし、採点者が知りたいのは「具体的にどういう方法でコミュニケーションをとるの?」ということです。この肝心な部分について、この答案では、何一つ伝わりません。

書くべきなのは、たとえば、

・週に1度ミーティングを開き、各自の仕事の進捗状況や課題を共有できる場を作る

・日常的に仕事上の報告、連絡を密に行うことを呼びかけ、特にトラブルが起きた際には速やかな報告を励行する

・正社員、外部スタッフ問わず、出勤時や帰宅時にはこちらから進んで挨拶する

などといったことでしょう。

「コミュニケーションをとる」は、誰でも言えます。それを具体的にどういう方法で実行するのか、そこを書かないと説得力がないわけです。説得力がない答案は、大幅な減点対象となります。

次に、3つ目の「簡潔で話の筋道が通っている」について。

これは、「無駄な記述がなく頭に入りやすいか」「話が論理的で矛盾がないか」といった点がポイントです。

採点者の立場からすれば、大事なことが簡潔にまとめている文章が最良です。
逆に、何が言いたいのかわからない話が延々と続く文章は最悪ということになります。

この要素も、答案の印象を大きく左右します。そのため、結論を先に提示すること、話を整理し一定の話のかたまりで段落を分けること、などが大事になってきます。

これら3つの項目のどこに重きを置くか、減点の幅はどれくらいかなどの細部については、それぞれの試験、採点者によって違ってくるものの、文章によって受験生を公平かつ的確に選抜しようとすれば、おのずと、この3点に落ちついてくるということです。

小論文試験は、うわべの印象だけで点数を決めているのではありません。
きちんとした根拠のもとに、評価をしているのです。
是非、今回の事件に落胆することなく、正しい努力で合格を目指してください。

なお、『落とされない小論文』では、上記の「減点要因ランキング12」に即して、「減点される理由」と「その改善法」を、before→after形式で具体的に解説しています。

そのほか、小論文試験に一発合格する必要最低限の情報を、凝縮して伝えています。ぜひ、直前対策に使い倒してください。

※参考記事
「抽象的な文章」が劇的にわかりやすくなる4つのポイント