ベンチャーキャピタリストのブルー・オーシャン戦略

ムーギー:最後に、ベンチャーキャピタリストとしてのブルー・オーシャン戦略を伺いたいんです。つまりベンチャーキャピタリストは随分と増えてきています。この職業で、他とは違う価値を提供するためには、高宮さんご自身が大事にしていることは何でしょう。

高宮:なるほど。言ってしまうと市場を破壊されるから言わない、という一言で終わっていいですか?(笑)

ムーギー:ここはカットして掲載しないので、仰ってください(笑)

高宮:では、答えますね(笑)。ベンチャーキャピタリストという市場が魅力的で、レッド・オーシャン化しているかどうかは別として、私自身は出遅れているわけです。
 まず、第一世代のベンチャーキャピタリストがいるんです。グロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP)でいうと仮屋薗さんやインキュベイト・ファンド(IF)の赤浦さんがその世代ですね。第二世代が、GCPの今野さんやIFの本間さん和田さんですよね。私は、第二世代の中でも、若干遅めに業界に入っている。そういう意味では、どうやっていこうかなと思うところはありましたね。

ムーギー:でも、経験値がリターンと大して連動しない業界ではないんですか。

高宮:いや、しますね。経験値というか、知見やネットワークは連動しています。その知見を貯めるために、いかに人よりも早く多く投資して、成功も失敗も重ね早回しするのかは大事ですよね。

ムーギー:他には何が大事でしょう?

高宮:ブランドやレピュテーションが重要な商売という面はありますね。ムーギー君みたいに、ネットで炎上とかしちゃダメなわけです(笑)
 第二世代出遅れ組の中で、恐らく私は最初にメディアに記事を出し始めたVCだと思いますね。コンサルっぽい感じで、ソーシャルゲームが流行っていた時は、「ソーシャルゲームの勝ち筋4つ戦略」のような記事を出したりしたんです。

ムーギー:ネット炎上は、メディアで生きていくのでない限り、百害あって一利なしですからね(笑)。で、高宮さんは社としてではなく、個人的に発信を進めていたんですか。

高宮:そうです、個人的に。戦略を語ったり、プロダクトに関して深く踏み込むような視点で書いたりしています。

ムーギー:なるほど。

高宮:あとに、起業家との距離感が近いのが、他のキャピタリストとは違いますかね。プロダクトについて、一緒に楽しく飲みながら話せるから、同じ目線の仲間として見て貰えていると思います。勝手に思っているだけかもしれませんが(笑)

ムーギー:確かに、この3点は強そうですね。なかでも、高宮さんの親しみやすさや信頼感は、他のベンチャーキャピタリストが真似しようとして出せるものでもないくらい、突き抜けてらっしゃいます。

高宮:起業家と友達付き合いをしていて、起業家と家族ぐるみで会ったりもしていますね。

ムーギー:確かにフェイスブックを見ると、高宮さんが起業家の方とすっごく楽しそうに仲良くしている投稿を目にします。
 知見の早回しと、メディアでの発信、そして起業家との深い関係の構築。特に3つ目は他の人が真似しようとしても、すぐに出来ない部分ですよね。

高宮:炎上しない、きれいなメディアマーケティングは、ムーギー君だとちょっと難しいところだよね(笑)

ムーギー:私は対極的ですね。私が何か売るたびに、まずはアマゾンで1の評価が10個ぐらいドドッとつくという(笑)

 高宮さん、3回にわたって、ブルー・オーシャン戦略の基礎的要素である“既存の競争軸をずらした新たな価値の提供”から、人間的要素を十分に考慮した組織の巻き込み方、そして今話題のメルカリのブルー・オーシャン戦略要素から、高宮さんの第三世代ベンチャーキャピタリストとしてのブルー・オーシャン戦略まで、大変面白いお話を伺えました、ありがとうございました!

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