上司を絶対に驚かせてはならない

「報告+ネクストステップ」が終われば、「相談」に移ります。
 ここで重要なのは、どんな些細なことであっても、ネガティブ情報をきちんと伝えることです。いや、まだ“些細な問題”に留まっている段階で伝えることに大きな意味があるのです。

 なぜなら、「上司を絶対に驚かせてはならない」からです。トラブルが“小さな芽”のうちであれば、上司も手の打ちようがありますし、むしろ、上司のウデの見せどころとなる可能性すらあります。しかし、突然、大きな問題に直面した上司は、上層部から責任追及を受ける立場に立ちますし、トラブル対応に追われることになります。そして、“小さな芽”のうちに問題を報告しなかった部下に対する心証を決定的に損ねる結果を招くのです。

 こうなると、その後、その部下がどんな提案をもってきても、不信の目で見つめるようになります。これは、絶対に避けなければなりません。ですから、上司とのショート・ミーティングで、些細なことであってもネガティブ情報を伝えることを徹底しなければならないのです。

 もちろん、このときに「どうすればよいでしょうか?」と相談するのはNGです。考えなければならない問題をたくさん抱えている上司に、「考える手間」をかけさせるのは厳禁。必ず、自分なりの解決策を伝えて、「このように対処してよろしいでしょうか?」と確認する。常識的な解決策であれば、「君に任せるよ」という返事をするはずです。そして、すぐに対処をして、次のショート・ミーティングにおいて「報告+ネクストステップ」をすれば、上司も「しっかりやっているな」と安心してくれるはずです。

 この「安心」が重要です。なぜなら、上司という存在は、「部下はきちんと仕事をしてくれているか?」と常に不安を抱えているからです。そして、不安だからこそ、厳しい目で部下をチェックしようとするわけです。

 逆に言えば、安心させることができれば、上司が「視線」を外してくれるようになります。つまり、「彼に任せておけば大丈夫。何かあればすぐに相談に来てくれるだろう」と思ってもらえれば、細かいチェックの対象から外してもらえるのです。

 一方、こまめにコミュニケーションを取ってこない部下に対しては、非常に厳しい視線を投げかけてきます。そして、「あれはどうなったのか?」「あの件の進捗を報告せよ」と突然指示を出されることが増えます。その結果、チームで仕掛かり中の仕事をストップさせて、その対応に追われることになってしまうのです。

 もちろん、何か提案しようとしても、「本当に大丈夫か?」と“重箱の隅”をつつくようなチェックをされ、差し戻されるケースが増えるでしょう。これでは、とてもマネジャーとしての役割を果たすことはできません。上司を安心させることは、仕事の生産性を上げるうえで非常に重要なことなのです。