1955年に発表された第1回目のリストには、GEやIBMといった製造大手の名前が見られるが、両社とも今日、メインフレームや冷蔵庫、洗濯機について語ることはない。代わって「デジタルソリューションの提供」を強調している。

 それはこの業界一流の言い回しで、「ハードウェアは目的を達成するための手段である」ということを意味している。言い換えれば、彼らは自社の装置を売ることにではなく、それを使ってクライアント企業が得るものに焦点を合わせているということだ。

 GEは、1955年の最初のリストで4位、本書執筆中の2017年秋には13位だった。1889年にエジソン・ゼネラルエレクトリック社として設立された会社で、電球、電気設備、発電機の製造販売を行った。

 今日、GEは製品ではなくサービスから収益の大半を得ている。映画のアカデミー賞発表の放送で「工業製品も作るデジタル企業」というタグラインを流した。この変身こそ、GEがフォーチュン500のリストにとどまり続けている理由だ。

 IBMは1955年のリストで61位だったが、最近では32位だ。創業当初は商業用の秤とパンチカードを使った作表機を売っていたが、今日ではITと量子コンピューティングサービスを売っている。製品メーカーからビジネスサービスの巨人に完全に変化した。

 現在、自然言語処理と機械学習を利用して大量の非構造化データからインサイトを得ることのできるプラットフォーム、ワトソン(Watson)の開発に取り組んでおり、ボブ・ディランが人工知能システムとおしゃべりする場面を宣伝に使った。認知サービスの事業にも取り組んでいる。創業当時の事業を思えば、ずいぶん遠くへ来たものだという感慨を禁じえない。

 実は、1955年のフォーチュン500企業の12%が現在もリストに名を連ねていて、ほとんどがGEやIBMと似たような変身を遂げている。

 ゼロックス(Xerox)は、印画紙と関連機器の製造から情報サービスに移行した。マグロウヒル(McGraw-Hill)は、教科書や『アメリカの鉄道機械』といった雑誌を発行していたが、いまでは金融サービスや適応学習システムを提供している。NCRは、西部開拓時代にキャッシュレジスターを酒場に売っていたが、いまではデジタル決済サービスの分野でスクエア(Square)のような企業と競合しており、モノは何も売っていない。

フォーチュン500の新興企業たち

 最近フォーチュン500のリストに登場した企業も見てみよう。そこにはアマゾン(Amazon)、グーグル(Google)、フェイスブック(Facebook)、アップル(Apple)、ネットフリックス(Netflix)のような“新興エスタブリッシュメント”がいる。