鬼の形相でサザエさんとじゃんけん
努力ではいちばんになろうと決めた私は、ほぼ毎日、電気は点けたまま机で寝ていました。膀胱炎にもなりました。試験後は放送局からの電話連絡を待つために、電話線がちゃんとつながっているか1日に何度も受話器をあげて確認していました。
当時、テレビ番組の「サザエさん」のエンディングで「じゃんけん」コーナーがありました。試験が終わったある日、偶然流れていた番組を見ていると、なぜか頭の中にもうひとりの自分が現れて「このじゃんけんに勝てば合格の電話があるぞ」とささやくのです。
そして「じゃんけんをせずに、ここでチャンネルを変えたら人生逃げたことになるぞ」と私を追い詰めるのです。
やるしかありません。それはもう必死でした。あそこまで鬼の形相でサザエさんとじゃんけんをしていた人は、日本中探してもなかなかいなかったのではないかと思います。
今考えれば、精神的にかなり自分で自分を追い込んでいたのだと思います。ただ、1000人、いや数千人の受験生の中で1番と言えるほどの努力をしていなければ、1人しか合格しない試験で合格できなくてもくやしがる権利はないと思っていたのです。
「才能」で言えば、私は勉強も運動も得意ではありませんでした。だからこそ、ここぞというときは、他の人以上に努力しないと、同じだけの結果すら得られないと知っていました。
もちろん健康に留意しながら毎日を過ごすことは大切ですが、特別なものを手に入れたいのであれば、逆立ちをするような努力をするしかなかったのです。「誰よりも努力する」「時間をかける」という極めて単純な戦略以外に、他の受験生に私が勝てる方法はありませんでした。
(次回は、一瞬のチャンスを逃さないコツについてお伝えします。12/25公開予定です)