私が執行委員をしていた頃は、組合員が5万5000人くらい(管理職などを含めた全社員では6万7000人)だったので、職場委員は5500人。現在は、組合員は7万人(全社員では8万人)くらいに増えているため、職場委員はおよそ7000人になっている。

 職場委員の任期は1年か2年なので、職制の管理職になるまで平均15年とすると、職場委員を経験するのは3人に1人程度ということになる。

 組合専従になった頃、先輩に「労働組合は会社の教育機関だ」と教えられたが、トヨタマンとして育ち、長く活躍していくのに、職場での数々の議論はとても有効だったとつくづく思う。

みんなが本音を言える
土壌をつくれるか

 職場ごとに行われる職場会での話し合いは、いつでも、誰でも本音である。上司の目を気にして一所懸命に建て前の意見を捻り出す必要もないし、職制の会議のように「私はわからない」ということもない。

 労働組合の取り組みは、労働条件をよりよくすることによって生活を向上させるというシンプルではっきりした方向性を持っている。

 一人ひとりの組合員にとってもこの方向性は共通しているし、難しいことは何もない。つまり、労働組合の取り組みはすべて「自分のため」なのである。

 そして、10人程度の手頃な人数でなんのハードルもなく話し合える場は、フェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーション力を育む絶好の機会になる。10人程度の話し合い単位にこだわってきたのは、こういう意味も含んでいる。

 ちなみに、産業別労働組合(産業ごとにくくられた労働組合の連合体。自動車メーカーは、全日本自動車産業労働組合総連合会)の交流などで聞いてみると、他社の労働組合の最少単位の人数は40~50人、少ないところで30人程度だった。

 このくらいの人数になると、顔が見えなかったり、声がよく聞こえなかったり、一人ひとりの存在感が薄くなってしまう。また、部屋を確保したり、連絡や伝達をしたり、職場委員の手間もばかにならない。