ビジネスの成否は「交渉力」にかかっている。アメリカの雑誌で「世界で最も恐れられる法律事務所」に4度も選ばれた法律事務所の東京オフィス代表であるライアン・ゴールドスティン米国弁護士に、『交渉の武器』(ダイヤモンド社)という書籍にまとめていただいた。本連載では、書籍から抜粋しながら、アップルvsサムスン訴訟を手がけるなど、世界的に注目を集めるビジネスの最前線で戦っているライアン弁護士の交渉の「奥義」を公開する。

「安易な謝罪」は命取りである

 交渉において、「謝罪」は重要なポイントのひとつだ。
 特に、何らかのトラブルを原因とする交渉においては、謝罪するか否かが交渉を大きく左右することが多い。

 そもそも、日常生活においても、ビジネスにおいても、トラブルが発生したときに、どちらかが100%悪いという状況はそうそうない。初対面でいきなり殴りかかってしまったというなら話は別だが、トラブルに至る過程では、双方ともに多少なりとも落ち度があるケースが大半だ。

 そして、お互いの「非」を責め合う構図になれば、問題はこじれるばかり。対立を深めるだけで、交渉のテーブルにつくことすら難しくなるだろう。

 とはいえ、もちろん安易な謝罪は厳禁だ。
 特に、グローバルなビジネスにおいて安易な謝罪をすれば“命取り”になる。

 訴訟社会であるアメリカはもちろん、多くの国では、「謝罪した=自らの非を認めた」と認識されるからだ。一度、そのように認識されれば、交渉の最後の最後まで「あなたは謝罪したではないか? なぜ、いまさらそんな主張をするのだ?」などと利用され続けるだろう。そして、不利な条件を飲まざるをえない状況に追い込まれてしまうのだ。

 しかし、だからと言って、一切の謝罪を否定するのも大きな間違いだ。そのような姿勢はむやみにを長引かせるだけで、建設的な交渉を実現する道を自ら閉ざしてしまうだけ。結局、不利益を被る結果を招くのだ。