子育て中の親の悩みが幸せに変わる「29の言葉」を集めた新刊『子どもが幸せになることば』が、発売前から注目を集めています。

著者は、共働きで4人の子を育てる医師・臨床心理士で、20年間、5000回以上の面接を通して子育ての悩みに寄り添い続けてきた田中茂樹氏。親が「つい、言ってしまいがちな小言」を「子どもを信じることば」に変換すると、親も子もラクになれるという、心理学に基づいた「言葉がけ」の育児書です。

この記事では、自己肯定感の源になる「自信」とはどんなものなのかを、特別公開します。(構成:編集部/今野良介)

「何か自信をつけさせてあげたいのです」

小学1年生の母親からの相談でした。
そのなかで、母親は次のような質問をされました。

「うちの長男は、まったく運動ができないので、体育の家庭教師をつけたいのです。ボーイスカウトのキャンプにも参加させたいと思っています。何か自信をつけさせてあげたいのです。でも、嫌がるに決まっています。子どものためになると親が思うことでも、子どもが嫌がるのなら、させないほうがいいのでしょうか?」

子どもは、それぞれがしっかりと自信を持っています。そこに、大人から見て確かな根拠(証拠、事実)の有無は、関係ないのです。

この親子の例であれば、ボーイスカウトのキャンプに参加した(参加させられた)としても、それが「根拠」になって自信を持ったりはしない。それが多くのケースに関わってきた、そして子どもの遊びサークルで15年子どもと関わってきた私の実感です。

サッカーを例にとれば、チームで一番上手な子も、選抜チームに上がっていくと一番ではないかもしれない。さらに県の代表チームになると、もっと上手な子と自分を比べて、自信はなくなっていくのが普通です。

大人から見たら「そこまでいければいいじゃないか」と思うかもしれませんが、極端な話、日本代表に選ばれても、外国のチームと対戦してはるかに上のレベルの選手を目の当たりにして、自信をなくすこともありえます。これは勉強でも、音楽でも、同じことです。

根拠のある自信と、根拠のない自信、どちらがより強力なのでしょうか。
それはもう明らかに、根拠のない自信のほうです。

子どもは誰もが、大人と比べるとはるかに楽観的です。

根拠のある自信は、根拠となる事実がなくなれば消えてしまいます。何かが達成できなかったり、失敗したりすると消えてしまう自信なのです。

一方、根拠のない自信は、予感や信念のようなものです。理由はないけれど、なんかうまくいくような気がする。いいことがあるような気がする。そんな感覚です。

あなたの近くにも、こういう人はいないでしょうか。

人もうらやむ学歴、地位、財産、健康など、すべてを手に入れているように見えるのに、あまり幸せそうではない人。

その逆に、いろいろな困難を抱えていて、ちょっと大変そうだなぁと思う状況にあるのに、カラ元気というわけではなく、どこかのん気で、幸せそうで、他人にも親切で、やさしくできる人。

生まれ持った性質も、もちろんあるでしょう。それでも、子どもは誰もが、大人と比べるとはるかに楽観的です。

その楽観性を失わないように関わることで、「理由はないけど、いいことがあるような気がする」心の根っこの部分を育てることができると思います。

そのような心の根っこを育てるためには、大人から見た成功体験を与えるなどの方法ではなく、そのままの子どもを受け入れるという、ある意味で簡単だけれど、実は勇気と根気のいる向き合い方が決め手になると私は感じます。

根拠のない楽観性。根拠のない自信。これらは、子どもが大人になったとき、うつや自殺からも守ってくれる、とても大切なものです